第31号 水野 靖子 (7回生)

ものづくりへの挑戦

「リビング・コンポジション」のシリーズで展覧会をはじめて長い時間が流れた。
施主からの注文があって成立する建築の仕事と違って、依頼のないものをデザイン製作することは、自由な反面、雲をつかむようでリスクも大きく試行錯誤を繰返した。結局日本人としての血と環境、生活経験を今の感覚でとらえ直してみることをデザインコンセプトの核として、自分がほしいものを創ってきた。
スクリーン・オブジェ、ゴム素材の文具、傘立て、鏡、花器、照明器具、携帯用の茶道具(旅持ち)、アクセサリー(ゴムとアクリル)等々・・・基本的にこれらは、生活にかかわるものとして建築と一線上にあるという考えでデザインしているうちにその範囲も拡がってしまった。
ものの機能を限定せず使う人の気持ちや空間とのかかわりで、なるべく多様に展開できるよう例えばゴムの比重とあたりのやわらかさをいかした10cmキューブの傘立ては、連結して彫刻の面白さを持ち、花器や台の脚部にもなる。
第一回目の会(1976)から繰返し取り組んでいるスクリーン・オブジェは特に愛着のあるアイテムで、経師の襖状の板や新しい素材(段ボールや新素材の板)を面として、それらを無数に連結していく“ジョイントシステム”を追及している。360°回転する自由蝶番のもつ“からくりの妙”にひかれて紙蝶番、紐蝶番、鋲蝶番を展開、数枚の板が2本の紐で即座に起き上がって屏風上の彫刻となり、ばたばたと動くさまは感動的でもある。空間を仕切る、空間をつなぐ、シーンの装置となる。屏風風の使い方(枕屏風、風炉先屏風)、床の間のような飾り空間となる、遊具等々・・・・・・その応用範囲は広く、表情を変える彫刻の面白さが魅力的だ。
(「建築東京」の記事より抄出)

作者紹介 水野 靖子  (7回生)

水野靖子建築デザイン研究所代表。一級建築士。
日本女子大学住居学科卒業。同学専任講師を経て、女子美術短大講師。
東京都広告物審議会委員。
住居設計とともに、インテリア、リビンググッズなどのデザイン、製作も広く手がけている。
1977年よりSASUKO MIZUNO LIVING COMPOSITION のシリーズで展覧会を開催。

著書: 「よしなしごと」、「母大好き」等