【今こそつながろうプロジェクト】石川県、金沢市より~暖炉のある家づくり

新型コロナ感染拡大の影響で心細い日々を過ごしていらっしゃる会員の皆様へ。
このような時こそ、つながっていきましょう!
トンネルの先がまだ見えない今、全国各地で暮らす同窓の方々の【今】と【メッセージ】を届けていただきました。(執行部)

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倉知 順子(旧姓 井田)さん 46回生/高橋公子ゼミ/石川県金沢市在住
住居学科卒業後、大和ハウス工業株式会社の住宅設計課勤務。
2011年よりアメリカ、ペンシルバニア州フィラデルフィアで生活。ペンシルバニア大学医学部で技術補佐員として働き、実験補助、プレゼンテーション作製や論文の図形作成業務を行ってきました。一昨年帰国し、石川県金沢市で生活を始め、慣れない日本海側の気候に四苦八苦しております。
※ペンシルバニア州には、ルイス・カーンの建築や、フランク・ロイド・ライトの落水荘、アメリカで最も古い住宅街など、興味深い建造物が多数あります。
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新型コロナウィルスが終息する気配は感じられず、感染しないよう、皆さま同様に、マスクに手洗いにと注意を払う日々です。自粛要請に鬱々としがちな日々でも心の健康を保つよう、家族と連絡を取りあったり、軽い運動をしたり、週末に自宅で映画を見たりと気分転換を心がけながら過ごしています。

今はまだ、新型コロナウィルスを押さえ込むことでどの国も精一杯ですが、終息した後には経済の立て直し、医療体制の見直し、働き方の変革などが起こり、私達の生活にも変化が起こるでしょう。新型コロナウィルスを起点とした激動の、まだまだ入口にいるのではと考えることがあります。翻弄され流されないためにもニュースを見て、今何が起きているか把握し、これから何が起こりうるか、どんな働き方が広まるか、どんな職種が伸びていくかを常に意識し、家族間で話し合うようにしています。

【ライトアップされた兼六園の雪吊り】
【ライトアップされた兼六園の雪吊り】

さて、少しだけ我が家の紹介をさせていただき、皆さまにほんの一時でも、気分転換していただけたらと思います。

7年ぶりにアメリカから帰国し、まず私が取りかかったのは、終の棲家となるであろう自分達の住む家の計画を練ることでした。金沢市郊外には夫の実家があり、敷地にやや余裕があるため、そこに私達の家も新たに建てることになったのです。

帰国が決まった頃、アメリカの研究室の人達から「どこに住むの?」とよく聞かれました。「金沢という町で、夫の両親と一緒に住む」と伝えると、女性研究員達が「えぇ!順子が可哀相よ!せめて水回りだけでも分けなくちゃ。」と口々に言い始め、夫が「同じ敷地内だけど、別棟を準備する予定だから。」と言うと、皆少し考え込んでから「…それなら良いわ。」と納得したようでした。

嫁姑問題というのは世界中ありふれた問題なのだなと苦笑し、フレンドリーに明るく振る舞うアメリカ人達にとっても、夫の両親というのは気を遣うものなのだと驚いた一件でした。

私達夫婦の希望は、1)北陸のじめじめとした冬でも快適に暖かく暮らせる家。2)暖炉のある家。3)天井が高く開放感のある家。

建築会社さんのご厚意で、設計と確認申請図面の作成までは私が行い、構造計算と施工をお願いすることになりました。

1)の要望に対しては、「新住協」という、高断熱高気密住宅を造る技術開発団体に属している地元の建築会社にお願いすることになり、解決しました。

今回お願いした建築会社さんは、暖かい家を造る事に情熱を燃やしているといっても過言でなく、方角による窓の配置や開口面積に気を遣い、窓を設ける場合はトリプルサッシを標準に、窓と桟の数ミリの隙間にまでぎゅうぎゅうと断熱材を詰めます。家の中で温度差を作らないことが健康を維持する要素の一つという考え方です。

【断熱材を詰めている所】
【断熱材を詰めている所】

2)に関しては、ビルトインタイプの薪ストーブをリビング中央に配置しました。

【リビング中央の薪ストーブ】
【リビング中央の薪ストーブ】

炎がゆらめく様は気持ちを落ち着け、一日の疲れを癒やしてくれます。

こんな小さな薪ストーブのみの暖房で、想像以上に部屋全体が一定に暖かくなり、外気温が10度以下でも、室温は28度を超えていることもよくあります。

【薪を燃やしている時】
【薪を燃やしている時】

通常、ストーブ本体は200℃を超え、熱せられた周囲の空気は80℃ほどになります。今回、少し工夫をして、その暖められた空気の一部を、送風ファンを利用し床下に設けたダクトを通して、寝室と脱衣室に吹き出すようにしてみました。

【薪ストーブ暖房の概念図】
【薪ストーブ暖房の概念図】

夜に数時間焚いた薪ストーブのみで家中がほかほかと暖かく、一度温まった家は、真冬の日中、暖房なしでも充分に暖かく過ごせます。

もちろんエアコンも設置したのですが、この冬は全く使うことが無く、暖房費はなんとゼロ!しかも、建築を請け負ってくださった建築会社さんが他の現場で出た柱などの廃材を時々持って来てくださるので、薪を購入する必要もなく、薪代もタダ!建築会社さんにとっても、廃材の処分の手間が浮き、双方にとって環境に優しい結果となりました。

3)リビング、ダイニング、キッチンの天井高は3m20cmと高めです。これは、私の住居学科の卒業論文のテーマが、「容積と床面積と天井高の関係」だったことに起因しています。容積が同じで、床面積が大きく天井高が低かった場合と、床面積が小さく天井が高かった場合、「ある比率の時には床面積が小さくても天井高が高い場合に空間の容積を大きく認識する」という結果を得ました。思いがけず大学で学んだ事を自分の家に活かすことができ、卒業後20年以上経ってようやく卒業制作を終えた気分です。

【リビング】
【リビング】

家の引き渡しが終わり、さぁいよいよ迷っていたカーテンに決着を付けようかという段階になって、県外への移動自粛要請が出てしまいました。

カーテンはスタイルや生地のデザインによって部屋の雰囲気をガラリと変えるので、東京のショールームに行って大きな実物を見ては、慎重に検討していたのです。

3月に入り、窓の外の新緑が外からの視線を遮り始めてくれたので、しばらくは自然の緑のカーテンを楽しみながら、またショールームに行ける日が来るよう、新型コロナウィルスの早い終息を祈っています。

穏やかな日々が戻って来た時にやりたい夢を今はじっくり練る時ととらえ、皆さまが健康に過ごせますよう、お祈りしております。

2020年4月29日
倉知順子

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