2023年11月18日に開催された「管の家」見学会のご報告です。
前日の雨とうってかわり、時々曇りの秋晴れの天気に恵まれた【管の家】見学会でした。
参加者は34名を得、盛況に開催されました。
【管の家】は住居学科でかつて長年教壇に立たれていた故高橋公子先生のご自宅です。
高橋公子先生は住居学科5回生で、卒業後は東京大学の池辺陽研究室を経て、本学で住居設計計画を教えられました。
住居の会会員の中には「公子研」卒業生も沢山いらっしゃいます。
学生の頃に足しげく通った会員も多いと思います。
公子先生がお亡くなりになって早くも26年経ち、そして昨年高橋鷹志先生もご逝去されました。
公子先生の後に鷹志先生を支えてこられた橋本都子さん(M14回生、公子研、千葉工業大学教授)がこの度この【管の家】の継承を住宅遺産トラストに託されました。
【管の家】との命名由来は「管」つまり「スチールパイプ」の曲げ加工を主要構造として形作ったことからとのこと。スチールパイプ60.5φを640モジュールで建込み、それを9φ鉄筋ブレースで繋いでいます。この主要構造で W4.5m×L15mの鳥かごのような無柱空間を形つくっています。
その外側に壁としてラワン合板パネル(これも640モジュール)を取り付け、遮音シートと亜鉛鉄板瓦棒葺きで外面を仕上げています。
ラワン合板パネルの内部側は特段の仕上げを施さない構成となっています。
当時施工を担当された大原工務所の大原彰さんのご説明によると、鳥かご構造は、打ち合わせ後の焼鳥屋での串に発想を得たとのこと。
また、「管(くだ)」は「クダをまく」に通じる、とのエピソードは、お酒と共に学生・研究者等々と議論や杯を酌み交わしていた公子先生の人となりが感じられました。
管の家は手作りのプレハブ(モジュールに基づく設計やフレームの標準化、外壁パネルの標準化)、として高橋先生ご夫婦の熱意がいまだに感じられ、懐かしい「あの時代を表現した空間」であり、また、「あの時代が作った空間」だと感じました。
(青太字「女流建築家の現在」高橋公子著より)
上記のようにある時代を切り開いてきた先輩の自邸として、その時代の空気を体現させ、歴史を刻んだ建物として、住宅遺産として記憶に残されることは意義深いことと思います。
見学会後、木下会長の事務所が【管の家】のご近所だということで、そちらへ18名が移動して懇親会が開催されました。
途中道すがら、都市計画家・林泰義氏&建築家・富田玲子さんご夫妻の自邸:建築家の住む工業化住宅(セキスイハイムM1)を外から見学しました。
懇親会では参加者は回生と現在の様子や今までやってきた事などと共に自己紹介。
21,26,41,44回生の方たちが多く参加されました。
段ボール茶室の紹介や所属団体企業での近況と今の様子の紹介に話が弾みました。
その後、コーヒーやワイン、それと美味しいお菓子の差入もあり、わいわいがやがや在校時の思い出や「住居の会」のこれからに期待することなど、話に花が咲きました。
公子先生が教鞭をとられていた当時、まだ女性建築家が認められにくい社会の中、学生を激励されて社会に送り出されてきた先生でしたが、接点の無い卒業生も多くなりました。
今回の見学会企画を通じて、【管の家】と共に公子先生を記憶に留めてもらえればと期待したいです。
〈2023年12月 企画・山中〉
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