「瑠璃光院 白蓮華堂」見学会のご報告

7月25日(土)、厳しい暑さの中24名のご参加をいただき、設計者のお一人でもある31回生の竹山由美さんがご案内くださいました。竹山さんからは設計秘話をはじめ貴重なお話をしていただき、大変有意義なまた楽しい時間を過ごさせていただきました。

今回は竹山さんのご案内に順じて、写真と図面とともに報告させていただきます。

 

外観
写真① 外観
写真② エントランス内部
写真② エントランス内部

古来寺院は文化複合施設であり、学校・病院・美術館・図書館・劇場であったといいます。この白蓮華堂も開かれた文化施設としての建築であり、まさにそこが見どころの一つだと感じました。

まずはこの建物の最大の特徴でもあるホワイトコンクリートに至った経緯についてお話し下さいました。
外観からもわかるとおり、納骨堂を建物の芯に据えてその他の空間を上に開いていくというイメージで設計し、設計者の竹山聖氏がワイングラスの形だと表現したところ、クライアントであるご住職は「いや、白蓮華ですね」とおっしゃったそうです。
それなら白くしましょうということになり、そこからさまざまな試行錯誤を重ね、ホワイトコンクリートの打ち放しの建築に結実することになったそうです。
構造は肉厚床壁構造(壁構造)で、一番厚いところは90cmにもなります。上にいくほど薄くなり、どんな大きな地震があってもこの建物だけは残るという程安全な構造物になっています。(現在の建築基準法の2倍以上の耐力)
ホワイトコンクリートは打設時、練ってしばらくは非常に流動性の高い柔らかいコンクリートのため施工がとても難しく、日本初のホワイトコンクリート構造物のため強度実験や色味決定までの試し打ちなど困難な事が多々ありましたが、多岐にわたり竹中工務店がとても頑張ってくださったとの事です。

写真③ ホワイトコンクリート打ち放し面
写真③ ホワイトコンクリート打ち放し面

通常型板の打ち放しは、杉板の色がある程度コンクリート面に転写されるため、今回はその「白さ」を損なわないように剥離剤を入念に施し、また杉板の木目をきれいに出すため浮造(うづくり)を施しています。コンクリートの打ち放しとは思えないほどとても美しい仕上がりでした。

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平面図①  設計:AMORPHE Takeyama&Associates

 

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平面図②  設計:AMORPHE Takeyama&Associates

 

 

写真④ 阿弥陀如来像
写真④ 阿弥陀如来像

 

写真⑤ 如来堂内部(5階)
写真⑤ 如来堂内部(5階)

御本尊、阿弥陀如来像は今回のために新たに彫られ、後ろの青い壁はキジル石窟研究所より寄贈された天然ラピスラズリの原石を細かく砕き、膠に溶いた顔料できれいな青になるまで何度も塗り重ねられています。
また、春と秋のお彼岸の午後3時前後には、壁面の縦スリットより御本尊の頭頂より足下まで、すっぽりと全身を包み込むように西方から光が差し込むように設計されています。
ここには、世界の名器ベーゼンドルファーのピアノが設置され音楽法要も行われるスペースとなっており、後ろには特殊な吸音率の高い二重のカーテンが設置され、講演の場合やピアノを使う場合など状況に応じて使われます。

写真⑥ 本堂(4階)
写真⑥ 本堂(4階)
写真⑦ 敦煌壁画原寸大復元図
写真⑦ 敦煌壁画原寸大復元図

敦煌研究院より寄贈された世界遺産、莫高窟220窟の阿弥陀浄土図を原寸大(5410mm×3510mm)に復元したものです。
実際のものは洞窟内にあるため薄暗い中で見ることになるのですが、ここでははっきりと見ることができます。

写真⑧ 献水(4階西側テラス)
写真⑧ 献水(4階西側テラス)

サウンドアーティストの庄野泰子さんによるサウンドアート「献水」が設けられています。ステンレス製の水盤に水を落とすと、3階にある滴下装置によりとても美しい音が奏でられます。現代版水琴窟といった感じです。音色をお聞かせ出来ないのがとても残念です!

写真⑨
写真⑨ 空の間(4階)

空ノ間は、~どこにも属さず、すべてを結びあわせる~ を表現し、この建築全体を象徴する場所です。
また、ここ空ノ間は、道場であり、コンサート、座禅等多目的に使用できるスペースとして計画されました。
このスペースのために現代音楽家ピエール・マリエタン氏により「天と地の間」(約8分)が作曲されています。
ホワイトコンクリートの壁はフラッターエコーを防ぐために一方を傾斜させ、同様に天井やラオスヒノキの壁も傾斜させています。
天井高10m以上はある4階から6階にかけての吹き抜けの大空間は、居るだけで心地良い解放感のある場所で、天窓からの光は時間の経過をゆっくりと映していつまでもここに居たいと思わせる空間でした。
竹山聖氏もここが大好きで、ここを一番見てほしいとおっしゃっていたそうです。
ここ空ノ間の床と壁は、ご住職の岐阜の倉庫に保管されていた大量のラオス檜を使っています。床・壁ともにすべて無垢の木材で、無駄なく使いきるため、また音響効果にも鑑み、幅も長さもバラバラのあえてランダムな部材寸法でデザインを行っています。

写真⑩ 白書院(4階東側)
写真⑩ 白書院(4階東側)

法要、法要後の食事会の仏事等を行うほか、規模の大きなお茶会にも対応できるようになっています。
一ノ間、ニノ間、三ノ間とあり、一番奥の襖絵を日本画家でたいへん美しいことでも有名な松井冬子さんが「生生流転(しょうしょうるてん)」というテーマで描いています。現在は一ノ間のみですが、約3年をかけて松井冬子さんが完成させる予定になっています。

写真⑪ 法隆寺金堂壁画(3階東側ギャラリー)
写真⑪ 法隆寺金堂壁画(3階東側ギャラリー)

1949年に焼失した法隆寺金堂阿弥陀三尊の模写を安置しています。
この絵を見るだけでも、価値があるそうです。

写真⑫ 特別参拝室(地下1階)
写真⑫ 特別参拝室(地下1階)

今回特別に竹山由美さんの実のお父様のお骨を納めているという事で、実際の参拝室を見学することができました。一番奥の広い特別参拝室でしたので全員が中に入って説明を聞くことができました。
この部屋の壁1面は、大津壁のうち最高級の仕上げといわれる仕上げが施されています。この施工はスピードなど非常に高度な技術を要し、限られた職人のみ可能な仕上です。
またここの参拝システムについて具体的な質問がたくさんあり、竹山さんがその質問に対して丁寧にお答え下さいました。時間が足りない位で、皆さんの関心の高さがうかがえました。
こちらは宗派、宗教は問わず(キリスト教のかたでも)、無宗教の方にも広く門戸を開いている点や、納骨の方法など多様な要望にも相談できる点など現代のお墓の在り方をいろいろと考えさせられました。

写真⑬ 集合写真
写真⑬ 集合写真