第13回 住居の会奨励賞

img14-1馬場未織(46回生)
NPO南房総リパブリック 代表

南房総リパブリック

活動の目的
都市居住者にとっては、自然いっぱいの子育て環境は憧れです。価値観の多様化を背景に、「子育て中の田舎暮らし」を求めて里山物件を探す若い世代も少なくありません。
一方で、里山地域はいくつかの大きな問題(農家の高齢化、跡継ぎ問題、耕作放棄地の増大など)を抱えています。これらの問題をその地域の中だけで解決するのは大変困難で、里山環境の存続を危ぶまれています。
実は、この二つの問題は、相互補完的な関係にあります。里山という環境を都市居住者に提供することができれば、将来の担い手を失った里山はその景観を維持するための人材を確保することになりますし、自然環境の中で子育てしたいと考える人々からに目線によって、本来里山がもつ大きな魅力が再発見されることにもなるはずです。

上記の視点を軸に、わたしたちは、里山と都市生活者のコネクターとしての役割を果たすことを考えます。南房総という都心から最も近くて深い田舎で、都市生活者に「平日東京/週末田舎」というライフスタイルを提供するとともに、耕作放棄が進む南房総の農村再生を目指します。また、都市と農村など地域間のヒトの交流・物流を深め、二地域間のコミュニティの活性化を促します。
ある環境を否定し、ある環境を肯定するのではなく、互いの地域の得意を引き出し合うことで、社会全体の中で里山環境の価値を高めていく。このようなシステムを構築することを目指します。

img14-2活動履歴
2010年11月にキックオフの会を開催、翌11年5月に「NPO南房総リパブリック」設立総会、初回の里山学校を開催。里山学校チーム、カフェチーム、LVLワークショップチーム、名建築移築保存チーム(里山活動ベースキャンプづくりの一環)に分かれて活動を展開し、現在に至る。

活動の概要
1:里山学校
主に都会に住む小学生を対象にした里山体験学校。動植物専門家の指導者とともに、自然に触れ合い、自然の恵みを食べること、自然の仕組みなどを深く体感してもらう企画です。今年度は5月に「食べられるいきもの探し」、8月に「水辺のいきもの探し」を開催。11月には「土のフシギ、種のフシギ」を予定しています。

2:市民農園
主に都市居住者を対象に、農業指導付きの市民農園を開催。みんなで耕し、皆で収穫し、大変な農作業を楽しく行うとともに、子育ての場としても提供します。現段階では、里山学校に訪れた親子と苗植え、収穫などを楽しんでいます。

3:里山の資源の活用
持続可能な社会をめざして、間伐材などの里山資源の活用や、里山や農作物のブランディングなどを行います。特に、間伐材利用の可能なLVLという木質素材に着目。その強度や質感のよさを生かした快適でデザイン性の高い空間を提案。木製空間やプロダクツを開発します。来年4月より、建築学生・農学生を中心とした連続ワークショップ「LVL空間づくり」を開催予定です。

4:コミュニティカフェの開設
今年10月23日にオープンする「洗足カフェ」。南房総と都内の二地域交流の拠点であり、また目黒区の洗足駅前という地域のコミュニティの充実も目指す、日替わりオーナー制のコミュニティカフェです。南房総の安心安全な野菜を提供するとともに、里山学校の募集や報告会、レクチャーやライブなど、各種イベントも企画します。飲食のプロではなく、思いを同じにする仲間たちが手作りでつくりあげたカフェです。地元からも応援の声が集まっています。(2011年10月 記)