第1号 第1回林雅子賞受賞作

第1回 林雅子賞 森山 ちはる

cons1人生にとって建築は、生活機能や美意識を満たすためだけのものではなく、それに関わる人々にとっての精神的な砦でもある。その個人にとって意味を持つ空間としてのこうした価値は価値や機能として認識されることは少ないものの、「愛着」や「思い出」に反映されながら、確実にその空間の評価・認識への重要な役割を担っている。
しかし時と共に必ず生じるその物理的空間の変化の必要性に際し、この各個人にとって意味を持つ空間としての価値は、精神性の非即物的価値故に、重要視されないことが多い。

だが本当はそういった対建築の精神性こそが私達個人が建築を評価する最大の基準であり、対人間空間において最も大切にされるべき点ではないのだろうか。

そこで、新しい空間の内に今までの精神的な砦としての意義を遺しその想いを持続させることで、今まで我々の砦にとって打撃であった出来事を嬉しく有意義な改新に出来ないかと考えた。
「改新」は、健全に生き我々の精神的な砦を「持続」させる上の有効な手段になり得るはずだ。

実施の設計でもあるこのヤマユリソウの新築で、より感情を持った生命としての「ひと」と対人間空間としての「砦性」を大切にする、空間の本質のリノベーションを提案したい。