雑誌a+u 2025年9月号のご案内 特集:ピエール・ルイジ・ネルヴィ

建築雑誌a+uの9月号のご案内です。
ドイツ在住の福田陽子さん(44回生)がゲストエディターとして取材、執筆しています。

<福田陽子さんからのメッセージ>

建築雑誌a+uの9月号は、イタリアの構造家ピエール・ルイジ・ネルヴィ(1891〜1979年)の特集です。
建築史の本で見かけたことのある名前かもしれませんが、最近では全世界の人が彼の作品をテレビで目にしています。新教皇レオ14世が最初の演説を行ったのはバチカンにあるパウロ六世記念ホールで、これはネルヴィの代表作の1つです。
ネルヴィは素材の可能性、構造、技術性、経済性、美的表現、施工性、機能性を追及した大空間を特徴とする作品を生みだし続けました。
文化庁からローマのICCROM(文化財保存修復研究国際センター)に派遣されていた知人から「保存問題関係でネルヴィが再評価されている」という情報にピン!ときたことで、この号がスタートしました。
しかし、予想に反して図版や写真の収集が困難を極め、会社の有給休暇を利用してローマに飛んでイタリア国立21世紀美術館のアーカイブにて1週間ほど缶詰になり、1400枚ほどのオリジナルの写真や図面やドローイングを見せてもらうこともしました。
ネルヴィの現役時代、構造計算は当然ながら手計算。コンピューターやAIによって今は「なんでもできる」時代ながら、技術の進歩に比例してネルヴィの創造性をはるかに陵駕するような建築が生み出されているのか?それを静かに問う一冊でもあると思います。
それと同時に、保存問題にネルヴィの多くの建築が直面しており、その保存や活用方法の事例は他の多くの近現代建築の保存問題の良き解決事例となることを願います。