飯野由香利(新潟大学教育学部 教授) (33回生)
第19回(2017年度)住居の会奨励賞
2017年度住居の会奨励賞は飯野由香利さん(33回生)に決定いたしました。受賞された飯野由香利さんには、2018年7月(予定)の総会にて、講演をしていただく予定です。
飯野由香利さんの活動のテーマは、建築教育です。飯野さんは中高生の教育課程の中で十分な建築教育がされていないことに問題意識を持ち、地域の中高生を対象に行っている建築講座において、2014年から参画し主導的に建築教育を行っています。飯野さんが主導的に活動されていること、活動の目的と実践が合致していること、活動実績があり、地域や社会に影響を与えていることが評価され決定に至りました。
なお、本活動は、2017年において日本建築学会教育賞(教育貢献)と ゴールデン・キューブ賞を受賞しました。
他の3つの活動もたいへん素晴らしい活動でした。応募された皆様の今後ますますのご活躍を心より期待しております。
今年度は4つの応募があり、これまでになく応募数が多かったことで、奨励賞の認知度が上がったことを関係者一同喜んでおります。
なお、今回の選考方法は、応募数が増えたこと、応募された活動内容が多様だったため、漠然とした投票では正しい評価が難しいと考え、今年度から評価軸を作り評価シートによる選考に変更いたしました。そのため準備期間が長くなり評価期間が短くなってしまったにもかかわらず、評価者の皆様(回生幹事会出席者)にはしっかりと評価していただきました。ご協力いただき感謝申し上げます。
選考結果
○奨励賞決定 飯野由香利さん テーマ 1/10組立模型を用いた建築講座
- その他の応募者(アイウエオ順)
川島真由美さん テーマ 認定こども園「勿来幼稚園」の設計活動を通して-地域とともに育つ子育て支援環境づくり- http://www.kmad.jp/
永峰麻衣子さん テーマ 吉田村プロジェクト http://www.yoshidamura.net/
平野亜希子さん テーマ 赤い椅子プロジェクト https://akaiisu.blogspot.jp/p/no.html
◾️飯野由香利さん 活動の目的◾️
現在の義務教育や高校までの教育課程の中で、建築を学べる科目は主に家庭科の住生活ですが、十分な建築教育をしているとは言い難い状況です。
その要因として、住生活の授業では、
①調理や被服製作実習といった実験・実習がほとんどないこと、
②住生活を教える十分な時間がないこと、
③住居学科等の出身の家庭科教員が少ないことから住生活に関して十分に理解して教えることができないこと、
等が挙げられます。
一方で、建築教育では計画・環境・構造・施工の各々の領域を専門的に分断して教えています。
中高生に建築を教える場合には各領域を専門的・多角的に教えて総合的に学習できる仕組みが求められています。
中学生は与えられた住宅や住環境を客観的に捉えていないことから、住宅に興味・関心をほとんど持っていません。
一方、建築で学ぶ構造や環境は数学の原理・原則や理科で学ぶ力学や伝熱等と密接に関連しており、日常生活における応用現象を科学的に捉えることができます。これらのことを踏まえ、中高生が興味・関心を持って建築を多角的に科学的に理解する建築講座を確立することを目指しています。
そのために、中高生の理解度を向上させるための有効な教育的な方法や手段を取り入れ、計画・環境・構造・施工の各領域を学びながら建築を総合的に把握できることを目指しております。
活動の目的は、1/10組立住宅模型を用いて、中高生が住宅や住環境に興味・関心を持ち、住宅を計画・環境・構造・施工の多角的な観点から学び、住宅や住環境のメカニズムを科学的に理解し、体験型の協働学習を通して建築を総合的に楽しく深く学んでもらうことです。そのために建築講座の前半ではパワーポイントを使用して学習する内容の原理・原則を理論的にわかりやすく説明し、補助教材を用いながら理解を深め、講座の後半では生徒自身が主体的に対話しながら学ぶ協働学習の形式にしています。
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