<あらすじ>
遠い国の9.11。
1973年チリ軍事クーデタ後の独裁政権下、パウリナは当局に拉致・監禁され、仲間についての情報を強要される。
過酷な拷問のたび、必ず流される音楽がシューベルトの四重奏曲「死と乙女」だった。
それから十数年、四重奏曲「死と乙女」から逃げ続けるパウリナ。
偶然にも夫ヘラルドを車で送って来た医師ロベルトの声を聞くや、封印したはずの記憶が彼女の眼前に躍り出る。
真実を、裁きを、再生をそれぞれに求める3人が奏でる、戦慄の心理サスペンス。
Ariel Dorfman/アリエル・ドルフマン
1942年アルゼンチン生まれ。
父の転勤に伴い幼少期をニューヨークに過ごしたのち、1954年チリへ移り住む。
長じてアジェンデ政権を支える。
文化帝国主義分析の名著『ドナルド・ダックを読む』(共著)は1973年9月11日の軍事クーデタ後「禁書」扱いを受け、本人はアルゼンチン大使館に身を寄せる。
以後パリやアムステルダムなどを転々とする亡命生活に入る。
1985年より米デューク大学教授。
1990年の民政移管後はチリと米国を往復。
軍事政権下の人々を描いた戯曲『死と乙女』『谷間の女たち』『ある検閲官の夢』の「抵抗三部作」が高く評価される。
半生記に『南に向かい、北を求めて――チリ・クーデタを死にそこなった作家の物語』(岩波書店)がある。