爽やかな秋晴れになった11月9日(土)、日本女子大学成瀬講堂で、我 が校のOBである妹島和世氏をお招きしての講演会「環境と建築」が開催されました。当日は学内外から約400名の参加者が訪れて、成瀬講堂の中は、会の始まりを待つ静かな熱気が感じられました。
当日撮影した写真は自由にダウンロードできます.
懇親会の楽しい写真もたくさんあります!
■■ 講演会の様子 ■■
はじめに「どのように使われるか」を考え、それから「どのように組立て」、「地域につながっていくか、場所にあわせていくか」を考えながら設計を進めていったのか、妹島氏ご自身の作品映像と共に、2時間にわたり詳しく話をしてくださいました。
「金沢21世紀美術館」 (2004石川県)
割烹着でも入れるような市民に開かれた新しい公共建築として、どこからでも入り易い大きな円の建物とした。日比野克彦さんのアートプロジェクトで子供たちが春に蒔いた朝顔が、夏にはガラス壁を覆い別の顔を見せていたことなどを感慨深く語られました。
「ニューミュージアム」 (2007 NYアメリカ)
「周囲の建物規模に近い箱を少しずらして積み重ね、エキスパンドメタルで覆われた建物はスリットから光や人影が漏れて、外と街が呼吸していくようにつながっている。」と説明。
「トレド美術館ガラスパビリオン」 (2006 トレド アメリカ)
ガラス工場のある地域のガラスコレクションのための建物、「ガラスの壁がカーブすることで、自分の動きにつれて外と中が流動的に視界に入ってくる。」 『流動的』という言葉が印象に残りました。
「ROLEXラーニングセンター」 (2009 ローザンヌ スイス)
スイス連邦工科大学の人々の交流の場と図書館。どこからでもアクセスできる配置で、中は仕切りのない大きなワンルーム、緩やかにうねる床と天井の間で空間 が続き、全てのスペースにつながっている。「穏やかな通風や音の問題の処理などで技術者の貢献も大きかった」と話 されました。
「サーペンタインギャラリー」 (2009 ロンドン イギリス)
解体・組立・移動が可能なことが条件の公園内の仮設のパビリオン。公園がより綺麗に見えるように、「アルミ鏡面仕上げのカーブ屋根で木々や周囲と融合的に構成。」雨天では、それが雨の壁となって、嬉々とした子供達の映像に妹島氏も嬉しそうでした。
「岡山大学Junko Fukutake Hall」 (2013 岡山県)
新キャンパス計画の一環で、地域との関係づくりを重視する方針から、「広さが調整でき、集まり方によって変えられるスペースを」と、市民も自由に参加でき、様々に出会える交流の場に。
「京都の賃貸住宅」 (2013 京都)
10軒からなる集合住宅で、周囲の屋根のコードに合わせて小屋根の集合体
をつくり、屋根下の内部空間、屋根付きテラス、青空テラス、庭、と「内と外が混ざった場所になること」を説明されました。シェアされた魅力的空間に興味津々です。
「東松島市 宮戸島のみんなの家」 (2011~)
東日本大震災のあと、4人の建築家と帰心の会という活動を行っている。宮戸島でつくったみんなの家は、「大きなテラス・暖炉・大きな金属屋根」を設け、「皆が落ち着いて、自分達の未来の村について話せる場所作り」を目指した。
「犬島 家プロジェクト」 (2010~2013 岡山県)
過疎が進む中、定住の考え方を広く緩く捉え、半日で歩けるくらいの集落のうち、使われていない家を借り受け、各々つなげていくプロジェクト。古い民家の木 材も利用。狭い路地が多い為、材料は人が扱える小さなサイズとなり、「場所によって材料を選択することを思い出した」と話されました。
「ルーブル ランス」 (2012 ランス フランス)
元炭鉱工業地域で、緩やかな傾斜地に合わせて建物をカーブさせ、高低差に沿う一層の建物。言われなければわからない程のカーブがこの場所と馴染んだそうです。
その後の質疑時間、多くの挙手がありました。妹島氏は海外ならではの苦労など、多岐にわたる質問に丁寧に答えてくださいました。が、残念ながら時間切れに。 Q&A集はこちら
国内外のコンペを勝ち取り、様々な賞に輝く最も注目される建築家から、「のめりこみ、辛くてもやり続けて、学び成長し続けていく事が大切なので頑張って下 さい。」と母校へのメッセージを頂き、篠原教授からも「人と場所をつなげるだけでなく時間もつなげているとわかり、一番の教育の機会を先輩から頂いた」 と、誇りと感謝の気持ちに満たされました。
(記:HP係 武田 小竹)
参考:当日のアンケート集計
*クレジット付きの写真は、妹島氏のご厚意で掲載させていただいてます。