「明桂寮見学会」に参加して

7月13日(土)、総会終了後の16時過ぎから「明桂寮見学会」が開催された。
最初に明桂寮保存の会を代表して早川静さん(非常勤講師、38回生)の挨拶があり、薬袋研究室による資料と薬袋先生解説のビデオを拝見し、予備知識を得た後、29人が四グループに分かれ、4人の先生に先導されて明桂寮を見学した。
明桂寮は佐藤功一設計で1927年(昭和2年)に竣工、関東大震災後に普及し始めたRC造による最新の技術を集めた住居系建築の一つとして注目すべき建物である。日本女子大学建学の精神に基づいた新しい暮らしの実践の場として、当時の意気込みが感じられる。1929年(昭和4年)には香淳皇后やインドの詩人タゴール氏来訪の記録がある。当時、日本女子大学そしてこの建物が高く評価されていた証であろう。社会情勢を知る上でも貴重な存在といえる。

寮は当時のモダンなデザインが随所に見られる。しかし、使われなくなってからすでに20年以上経っており、外壁は破損していないものの古めいて蔦が絡んだりしていた。
我々はヘルメットを着用して懐中電灯を携え、グループごとに地下階から1、2、3階、屋上を廻った。

写真下:玄関入口の受付窓口
1階にはお客様用玄関、生徒用玄関(人数分の靴箱の設置有)、南向きの明るくモダンな食堂とキッチンがあり、応接室、寮務室、寮監室、お主婦室などもあり、当時の暮らし方を想像することができた。
(※お主婦室:携帯電話など夢の時代、入口に置かれていた電話の当番やいろいろな雑事を「お主婦当番」で分担していた。お当番になった人は、その期間は布団を持ち込んでお主婦室で寝泊まりしたとのこと。)

 

食堂の大きなアーチ窓からはキャンパスの方向を見晴らすことができる。ただし現在は大学のいろいろな備品置き場となっている。
応接室だけは当初からカーテンが付いていたそうです。
2階、3階には居室が各階12室あり、1室を3人で使用していたという。
トイレは水洗式で、洗面所には棚やタオル掛けの工夫がある。地下階には浴室、洗濯室があり、敷地の傾斜をうまく利用して、南面からは明かりも入る細やかな気配りがうかがえた。洗濯用シンクの上が洗濯機置き場になっていた。
当時は外部に生ごみを入れメタンガスを発生させる装置が設置してあり、燃料として調理に使用していたとの説明があった。

屋上に上がると気持ちの良い空間が広がり、周りの緑の多い美しい景観を望むことができた。(註:上写真の中央に見える茶色の建物が大学の百年館、その手前、中層の白い建物が学食のある七十年館です。)日常は洗濯物の干場として、時には瞑想の場として使われていたという。
この屋上には土埃が風で運ばれ、草が生えたりするので、有志の方々により建物の劣化を少しでも防ぎたいとの思いから、この春から定期的に清掃を行っているとのこと。
見学を終えて、下の道路までの帰り道はブルーのアジサイがちょうど満開で心地よく、皆口々に感想を話し合いながら、歴史的な建造物に対しての懐かしさと、畏敬の念に満たされて帰路についた。
(文:企画係 田中、泉/写真:広報係)

※ところで現在、敷地内の他の2棟(潜心寮、泉山寮)は2019年3月よりリノベーション工事のため休寮中で、2020年4月ごろには完成予定とのこと。寮生たちは今は別のところに分散して住んでいます。完成したら、そちらも見学したいですね。(広報係)