第6号 濱口 惠子 (29回生)

庭の楽しめる医院

lookバス通りより少し奥まった住宅地に建つ医院併用住宅。1階が医院2・3階が院
長夫妻の住宅です。この建物は25年前に建てた自宅を取り壊し新築されました。竣工と同時に、院長は永年在籍した総合病院の勤務医を辞め、院長をはじめ、キャリアのある女性だけのスタッフにより、住み慣れた地元でのホームドクターとして医療活動を新たにスタートさせました。
病を患って不安な思いで医院を訪れる患者さんに対
し、少しでも明るい雰囲気の中で診察が受けられるようにしたいと考え、庭の楽しめる医院を設計しました。

待合室と診察室前の廊下に開口部を設け、常に庭が一望できるようになっています。この庭の存在により、四季を通して草花の成長を楽しんでもらい、少しでも待ち時間に心が安らいだり、植物の美しさや生命力が
病気で訪れた人々の精神的な癒しや励みになり、気分転換をはかれないものかと考えました。更に、外出を嫌がる寝たきりや足腰の弱い高齢者や身障者にとっては来院の楽しみとなり、外出するきっかけになればという思いも込めてあります。
周辺には高齢者が多く住んでいること、近くには区の福祉施設があり医院では定期的に診察を受け入れる考えがあることなどを考慮し、医院内は高齢者や身障者に配慮した設計となっ
ています。具体的には、医院の玄関前には車椅子の乗降のために送迎車が駐停車できるスペースを確保したこと、3台分の駐車場を確保したこと、医院内は土足とし外部より直接車椅子で入れること、車椅子の通行に支障のないスペースを各エリアで確保したこと、床に段差をなくしたこと、歩行に必要な手すりを設けたこと、患者の使用する扉を引き戸としたこと、車椅子対応のトイレを設置したことなどです。個人の小規模医院にしては多くのバリアフリーに
配慮した建築として設計し、東京都福祉のまちづくり条例の特定施設として認定もされました。
院長の目指す健康の回復と維持のための医療活動は、大家族の中で親身になって治療が施されていくような印象を受けました。そこで、各部屋を機能別に独立させてしまうのではなく、医院全体を天井高3mのワンルームと考え、その中でプライバシーを必要とする診察室と水廻りスペースのみを閉じたコア空間として設計しました。また庭との連続性や皮膚科での治療には自然光が重要であること、一日の長い時間を医院内で過ごすスタッフが、季節の変化や日々の天候の移り変わりなど外の気配を感じながら明るい環境で治療ができるようにと、開口部の大きな設計となっています。構造的に10本のH鋼を4.300 x 4.300に均等に配し、三方をキャンティレバーとして外壁を支えることで、自由で開放的な開口部を可能としました。

濱口惠子 29回生 (濱口惠子建築設計室)

濱口惠子(29回生)night
渡部祐子(28回生)

名 称: 吉永医院(皮膚科・内科・アレルギー科
・理学療法)
所在地:東京都板橋区大谷口2丁目
規 模:鉄骨造 地上3階建て
面 積:建築面積 149.71m2(45坪)

設 計:延床面積 293.63m2(89坪)
構 造:濱口惠子建築設計室
設 備:O.R.S.事務所
電 気: 川口設備研究所
施 工: 山崎設備設計事務所 大原工務所