第24回住居の会奨励賞  木下壽子さん(43 回生) ・ 飯野桂子さん(36 回生)

2022 年度住居の会奨励賞は、選考の結果、以下のお二人に決定致しました。

木下壽子さん(43 回生)「住宅遺産トラスト」・ 飯野桂子さん(36 回生)「NPO法人 柏倉家文化村」

住宅遺産の継承活動を行なってきた木下さん、山形県において文化財指定された古い住宅を利活用したまちづくりを続けて来られた飯野さん、高評価を得られましたお二人に授与させて頂きます。

建築文化的価値あるものの保存活動と、小さいながらも地域に根ざした建築保存を通してコミュニティ形成する活動を、住居の会として応援したいと思います。

受賞されたお二人には、2023 年7月(予定)の総会にて、プレゼンテーションいただく予定です。尚、賞金は、お二人に等しく授与されます。

1. 【住宅遺産トラスト】木下壽子さん(43 回生)
①活動のテーマ

「歴史的、文化的に貴重な住宅建築(住宅遺産)の継承活動」
住宅遺産トラストは、歴史的、文化的に貴重な住宅建築を「住宅遺産」と呼び、多様な継承活動を通じて、住宅遺産の持続的な保存・活用を目的に活動されています。木下さんは、理事に就任するとともに、事務局の一員として、活動の実質的な業務を担当されてきました。

②活動の背景と目的
わが国では建築のスクラップ・アンド・ビルドが繰り返され、住宅の多くは、相続や住み替えをきっかけに解体され、更地となり、やがて分譲されてしまうのが今の日本の現状であり、歴史的、文化的に価値が高い「住宅遺産」であっても例外ではありません。住宅遺産トラストは、これまで人知れず消失してきた貴重な住宅建築について、所有者に寄り添い、建物の価値を理解する個人/団体に継承する活動を行なっています。

③これまでの活動
一般社団法人設立のきっかけとなった旧園田高弘邸(現 伊藤邸)の活動から 15 年、一 般社団法人設立から 10 年を迎え、合わせて 15 件の住宅遺産の継承を実現されています。 その中には、新・前川國男自邸、土浦⻲城邸、ViILLA COUCOU などが含まれます。見学会、 シンポジウム、展覧会、音楽会、オンライントークなどのイベント、雑誌や新聞などの取 材協力を通じて活動が広く知られるところとなり、現在、個別の継承活動と並行して、建築だけでなく、金融、文化財、不動産、社会的投資など多分野の専門家とも協力し、より 持続的な仕組みづくりに取り組まれています。

④今後の活動予定
これまでの継承活動を継続すると同時に、より多くの住宅遺産や歴史的建造物 を保存し活用するための仕組みを構築することを目指されるとのことです。
また、住宅遺 産の価値に対する社会的認知を高めるために、見学会、セミナー、シンポジウムなどのイベントの企画、開催やメディア等への協力など、積極的な啓蒙活動に力を注いでいきたいとのことです。

伊藤邸(旧園田高弘邸)_1955年_吉村順三_2013年3月継承_©︎齋藤さだむ

新・前川國男自邸_1974年_前川國男_2008年6月継承_©︎齋藤さだむ

VILLA COUCOU(近藤邸)_1957年_吉阪隆正+U研究室 _2021年6月継承_©︎Eiji Kitada
(画像準備中)

から傘の家_1961年_篠原一男_2020年 3月継承_©︎齋藤さだむ

 

2.【NPO法人 柏倉家文化村】 飯野桂子さん(36 回生)
①活動のテーマ
「「みんなの居場所 岡縁里(おかえり)」プロジェクト」
山形県中山町岡地区において、現在国指定重要文化財となっている「旧柏倉(九左衛門) 家住宅」を保存活用したいという気持ちから NPO 法人を立ち上げ、現在「みんなの居場所 岡縁里(おかえり)」を開所し、来所者への気配り目配りを通して、ふれあいの場を作ら れています。飯野さんは、事務局として深く活動に関わって来られました。

②活動の背景と目的
2017 年に「柏倉(九左衛門)家住宅」は中山町に寄贈され維持保存への道筋が立ったものの、まちなみ保存に対する行政支援もなく、また地区の中心にある元中山町指定文化財 「旧柏倉喜作家」も空き家のまま 10 年以上荒廃したままでした。
1)黒板塀が続く伝統的な まちなみの中心にある荒れ放題だった「旧柏倉喜作家」を利活用し、まちなみを保全する こと
2)人と人とがつながり、助け合う関係に発展する「みんなの居場所」をつくり、地 域の特徴や暮らしの伝承に努めること
3)その場所を、観光客など多様な人材が地域づく りに参画するためのプラットフォームにすること
を主な目的として活動を続けて来られ ました。

③これまでの活動
岡地区の高齢者から聞き取りを行い、昔の暮らしを編集した「岡のほん」の発行や写真ワ ークショップを通して岡地区の魅力的な風景の発信に努めてきた結果、NPO 法人 柏倉家文化村のメンバーのほとんどが「よそ者」でしたが、徐々に理解や協力を得られるようにな ってきました。一方、まちなみの整備が進むとともに行政や観光協会による「黒塀のまちなみ」を周遊する企画が行われるようになってきました。なかでも「岡縁里」は、重要文 化財見学後に気兼ねなく過ごせる場所として、家族連れに喜ばれています。

④今後の活動予定
「旧柏倉喜作家」の土蔵の空間と収蔵品を利活用することが今後の課題です。柏倉家は芸 術家や考古学の研究者を輩出した家柄で、収蔵品の調査は柏倉一族の歴史を紐解く大切な 作業と考え、中山町教育委員会と連携しながら調査・展示の継続を考えています。蔵の収 蔵品には多数の生活の道具(⺠具)も含まれています。中山町所有の「旧柏倉家住宅」の⺠具は収蔵品として保存優先ですが、「岡縁里」では⺠具に触れて実際に使って、先人の暮ら しの知恵や手仕事の精巧さを感じられるような活用を模索します。

柏倉喜作家
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みんなの居場所 岡縁里
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Orai カフェ
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〇選考結果:奨励賞決定2名
【受賞者からのコメント】

 木下壽子さん(43 回生)「住宅遺産トラスト」
「2022年度第24回住居の会奨励賞」を授与いただきありがとうございます。地域のまちづくりNPOの活動からはじまり、貴重な住宅遺産を次代に引き継ぐというミッションを共有する素晴らしい仲間に恵まれ、地道に続けてきた活動が2022年に建築学会賞(業績賞)と母校の住居の会奨励賞のダブル受賞となったことは本当に光栄であり、「住宅遺産トラスト」の活動に注目してくださった住居の会の皆様に心から感謝申し上げます。これからも住居学科で学んだことや卒業生のネットワークを活動に活かしていきたいと思います。
住宅遺産トラストHP https://hhtrust.jp 


飯野桂子さん(36 回生)「NPO法人 柏倉家文化村」

  このたびの住居の会奨励賞の授与、大変光栄に存じます。
世界各地にお住いの同窓の皆さまのなかでも、特に小さなエリアのマイナーな活動に眼を向けて応援頂き、とても感謝しています。
受賞を励みに、元文化財だった古民家を舞台に、人と人のつながりを育む活動を継続してまいります。ありがとうございました。
〜岡縁里(おかえり)HP https://minnanoibashookaeri.jimdofree.com

皆様の益々のご活躍を心より期待しております。