インタビュー:Y’s table salon 山田美紀子さん(18回生)

山田美紀子さん(18回生)は、ご存じの方も多いと思いますが、隔年銀座で開催される「すみの会」オープニングで、白・黒のみの素材で料理をパフォーマンス、毎回素敵な料理で会場を盛り上げてくださっています。
*すみの会-小川信子先生を筆頭に住居学科卒業生有志による「白・黒」を基調にした書・墨画・絵画等の作品展(2年に1回開催)
今回の「同窓の広場」では、新企画として料理教室も主宰されている山田さんからお話を伺うことができましたので、皆様にご紹介させていただきます。IMG_2330

「日々の暮らしの中で」
「雨の中、ご苦労様です。」
笑顔で迎えて下さった山田さん。モノトーンのTシャツがとてもお似合いで、玄関には素敵にお花が飾られていました。よく見ると丸いスチロールをランダムに重ね、透明なアクリルの容器にはお庭の葉っぱが生き生きと差してあり、身近な素材のさりげない演出に、日々の暮らしの中での豊かさを感じた瞬間でした。
席につくと早速、自宅の庭で採れた梅のシロップ漬けのドリンクをいただき、すっかりリラックスモードに。テーブルには、今朝庭に咲いていたという茉莉花が可愛く飾られており、本来アウトドアや非常用に使われる懐中電灯がキャンドルのようなテーブルランプに変身しておりました。IMG_2336
実は、このカゴに飾られている焼き菓子も手作りで、手土産にと作ってくださいました。

「女の人生はママならない」
「人生というのは、色々なことがあるので、あまり深く考えずにいきあたりばったりでもいいのよ。」さらりとおっしゃる山田さん。
山田さんはご卒業後、設計事務所やデザイン事務所、女性の視線から水廻りに特化した事務所などでご活躍後、ご結婚を機に家庭に入られ3人のお子様を育てられました。
「子供ができたら家庭でしょ、という時代でしたから。結婚当時は味噌汁もろくにできなかったのですよ。姑は教育者でしたから味噌汁は浮くものと沈むものをいれなさいと教ええられたのよ。そう言われると考えざるえないものね。(笑)」
家庭に入り料理をやっているうちにどんどん楽しくなってきたそうですが、本来、人が集まることが好きで、作ることや考えることが好きな山田さんが、その才能を発揮されない訳がありません。ママ友のパーティや親族の集まりでふるまう機会も多く、益々腕は上がり、美味しいお料理でのおもてなしを教えて欲しいというリクエストも出てきたそうです。

「40歳頃になって子育ても一段落した頃、まわりの後押しもあって自宅で家庭料理中心の『料理教室』を始めたのがきっかけ。」
ミニコミ誌や雑誌などでも取り上げられ、まさにカリスマ主婦の代表的存在。子東京ガス  掲載記事PDF育てをしながら多忙な暮らしの中でも充実した生活を送っておられましたが、次なる転機はご両親様の介護生活でした。
「介護というのは、介護する人のサポートも大切なの。姉と母の介護をしていた時は、姉が仕事をしておりましたらから、いつでも変わってあげられるようにと思うとなかなか自分の仕事は後回しになってしまうの。でも、それはそれでいいと思った。その時その時で何に主軸をもつのか、本当に女の人生はままならないからね。」
様々な局面に立たされても、自分の立ち位置をしっかり見失わずこられてきた芯の強さと柔軟な生き方が、ふとこの凛とした中にあるしなやかさなのかと感じさせられた瞬間でした。

「食生活はその家の文化」
「食事はとても大事で、日々の暮らしの積み重ねが、その家の文化を作り上げると思うの。だから私の料理は、どこにでもある材料とどこにでもある調味料を使う簡単なものばかり。」
「でも毎日の食事って、家族の好みも考えなくてはいけないし、毎日変えなくては飽きてしまう。健康や栄養も考えなくてはいけないし、何といっても見栄えもよく美味しくないとダメでしょ。考えることがいっぱいなの。」IMG_2333

一流シェフ曰く一番難しい料理が家庭料理にあるという真髄がここにあるのかと納得しました。
「そして、毎日のことだから経済性も大事。高い食材ばかりは買えないので、私は旬の食材を使うの。旬の食材は美味しいし安いので買いやすいから。」
旬の食材でちょっと庭の葉っぱを飾れば、最高の大ご馳走ですよね。
「南天・もみじ・山椒は大活躍なので、鉢でもいいから植えてね。あと、葉蘭も便利。そうそう、せりや万能ネギの根っこはコップに差しておくと、ちゃん伸びてくるから捨てないでね。(笑)」

「日々の暮らしを大切に思うから、どこにでもある食材で、簡単に。」
山田さんは、40歳頃から始められた料理教室のレシピとお写真を12冊に及ぶIMG_2335ファイルに整理されていました。
毎月の教室では、旬のものや、はやりのものを使ったオリジナル家庭料理。家庭料理といいながら、その飾りつけのセンスで前菜からデザートまでのフルコースとなっています。
基本は和食ですが、タイ料理や中華、スペイン料理など家庭風にアレンジすることもあるそうです。他にもケータリングサービスやおすすめレシピの特別教室など要望に合わせて開催。「すみの会」のケータリングは30品目、60人分をな
んとお一人で作り上げてしまう手際の良さ。あの料理を召し上がった方は絶句ですよね。

お話を伺っているうちに、何だかお腹が空いてきてしまいました。
それを見計らって、山田さん、その月の料理教室のレシピでランチをご馳走してくださいました。(みなさま、私たちだけごめんなさい。)
なんと、実はこのガラスの器の下の四角いお皿はご主人の作品でした。
ご主人は陶芸教室で作り始めて、こちらも陶芸
家顔負けの食器がずらり。
食器棚の中には、日々の生活でも大活躍しそうなそんな食器でいっぱいでした。

箸置きやマットは建築材料
箸置きやマットは建築材料

「料理は総合力」
「料理って色んなことを考えなければならないのよ。例えば昨日のメニューは何であったかという記憶力、今晩は何にしようかという企画力、安く美味しい食材を手に入れる調査力、料理のー段取り力、対応力や適応力、表現力に創造力。結局、総合力が必要になってくるの。
そういう意味で、実は大学時代の『基礎意匠』の授業で学んだことが生きてきたりするのよ。」
確かに、よく拝見すると沢山ある箸置きは、いわゆる店頭で見る箸置きではな
く、「東急ハンズ」やホームセンターの材料コーナーで見かけるような材料であったり、部品であったり。「すみの会」のオープニングパーティーでは「食材は黒白でお願いします。」という依頼だったようで、頭を悩まされたそう。「ベージュは白ですよね。茶は黒ですよね。」などとおっしゃりながら、懐中電灯に透明のアクリ板をのせて、光で華やかさを演出。まさに基礎意匠の実践を拝見させていただいた感じでした。

最初は緊張気味の我々も、いつの間にか時間を忘れ、楽しくお話を伺っておりました。相手に喜んでもらうというさりげなく細やかな配慮、大切なことを教えていただいた気がしました。

「やめないで続けてきたことがよかった」
「自分が心地いいなと思うことをやってきたの。嫌じゃないことであれば、努力をしているうちに好きになってくるものよ。それをやるといいじゃない。」
まさに山田さんの人生は、本当に自然体でありながら、ご自身の軸足をいつもしっかりと確かめながら歩んでこられた強くしなやかな印象でした。

当日ご馳走になったお料理です(クリックで拡大します)

レシピをご覧になりたい方は、こちら(2015 7月menu) をご覧ください。
山田さんのご厚意で公開させていただいてます。

こちらは「すみの会」オープニングパーティ時、白黒のみで作られたお料理の数々

(千田 昭子(25)・中田 文緒(39)・村越晴美(39))