ふじようちえん見学会報告

「ふじようちえん見学会」

2017年7月6日 「ふじようちえん」の見学会が行われました。当日は夏の暑い日差しの中57名が参加されました。立川駅からバスに乗り15分、大山団地で降りると、公園や畑が広がる環境の中に円形の外壁がみえてきます。まず入口脇のFujiキッズテラスの1階で、手塚建築研究所の酒井氏から建築の説明を受けた後、加藤碩一園長のお話しをお聞きし、続いて園内を案内していただきました。

■ふじようちえん概要

1971年立川藤幼稚園開園、1998年学校法人みんなのひろば 藤幼稚園となる。モンテッソーリ教育(子供が本来持っている自ら育つ力を引き出し洗練させるプログラム-パンフレットより)を基本に幼児教育を実施。

2007年:現在の建物に建て替え、2008年日本建築学会賞、日本建築家協会賞、他多数受賞。

クリエイティブデレクター:佐藤可士和、建築設計:手塚建築研究所(手塚貴晴・由比)、施工:竹中工務店

幼稚園児:642名、教職員69名(外国人14名を含む)、その他:保育室スマイルエッグス(0~2歳)30名、スマイルキッズクラブ(会員制一時預かり)68名、学童保育、親子教室

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建物はドーナツ形で、教室、職員室が芝生の中庭を囲んでいます。建具は全て天井までの木製引き戸で、開放すると芝生の中庭と一体となって、子供たちが元気に走り回っています。

子供たちが育つ為の様々な仕掛が工夫されています。遊びを通じて大切なものを養っていく事が重要との園長先生のお話しがありました。

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屋上は無垢板貼で、外周183メートルの運動場、見学した日は暑い日でゴムのプールが設置され、子供たちは大はしゃぎで水遊び、楽しそうでした。

昔からの欅の大木3本あり、屋根を突き抜けて生えて、涼しげな木陰を作っていました。

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加藤園長先生のパワフルなお話しを聞きながら、施設全体を案内していただきました。

子供達は大勢の見学者がいても、気にせず自由に走り回っていました。園長先生のお話では、見学者は月平均200名あり、海外からの見学者(特に中国から)も多数来られるそうです。

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園長先生のデスクは中庭に直接面して、引き戸は開放されています。子供達全体を見守ることができます。近くの畑から、子供たちの取ってきた野菜など並べられて、お店のような賑やかさです。

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中庭を囲んで、3年~5年のクラスルーム、ライブラリー、職員室が配置されています。

さくら、きく、ばら、すみれ、チューリップなど花の名前がつけられています。天井から下がっている紐は照明のスイッチ。各室は高さ1800の家具だけで仕切られて、いろいろな音が聞こえてくる中でも子供達は集中しています。

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教室の中庭に面する引き戸は曲線のレールが天井にきれいに埋め込まれて、中と外が一体になります。庇の下は開放廊下です。

子供達はみんなそれぞれ、好きな色のTシャツを選んで着ています。

背の高い英語の先生、庇の天井にとどきそうです。

プールからあふれる水は樋に集まり、滝のように園庭に落ちています。子供達がその下でまた水遊びをしています。

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屋上にはいろいろな形のトップライトがついていて、下のクラスルームを明るくしています。下の園庭に滑り台で降りていく事もできます。

大きな欅は屋上にそのまま突き抜けていて、周りは子供達が落ちないようにネットがはられています。

この環境の中で育った子供たちが、これからどのように成長していくのか楽しみです。

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■今回在学生にも参加を呼びかけましたが、応募がありませんでした。今後募集方法や日時などを検討して、学生も参加しやすい工夫をしていきたいと思います。また集合場所の案内などが分かりづらかったとのご指摘がありました。反省点として今後に生かしていきたいと思います。

■園児の在園している時間帯での見学は難しい事が多いのですが、今回は園長先生をはじめ皆様のご協力のもと、生きた空間を見学させていただき、貴重な体験をさせていただきました。

ふじようちえんの皆様及び手塚事務所方々に御礼申し上げます。

(企画係)

◾️アンケートより◾️

保育園や幼稚園はなかなか⾒学させてもらえない施設なので、今回のふじ幼稚園の⾒学会は⼤変貴重な機会で、 ありがたかったです。特に、 園児が実際に過ごしている開園中に⾒学できた事は⼤変有意義でし た。できれば、1カ所でも教室に⼊れたら嬉しかったですが。。。。
⽴川駅からのバスの案内や、バス停から幼稚園までの道案内がもう少し親切だったらよかったという声を⽿にしました。
今回、 学⽣さんに参加を呼びかけた取り組みはとてもよかったと思います が、学⽣さんにも⼈気のある建築のはずなのに、 予想よりも参加者が少なかったのが残念でした。 開催⽇が学⽣さんの都合にはあわなかったのではないでしょうか。
⼿塚事務所や幼稚園の都合で⽇程がきまったと推測しますが、今後は開催する⽇を⼤学と相談して学内⾏事のない⽇を選んでいくとよいと思いました。
⽊曜の午後は学⽣は授業はないはずなので、学内担当の先⽣に早めにお伝えしておけば、 学科会議にあげていただけると思います。(39回生)

<企画より;学生さんへの呼びかけは、事前に住居の会担当の先生にお伝えし、ご意向も伺っての対応でしたが、反応は芳しくなく残念でした。>
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建物の⾒学をして   こんなに清々しく楽しい気持ちになったのは   初めてかもしれません。
⼦供たちも   先⽣も   樹々も   建物も、すべてが伸びやかにあの   楕円の空間に包まれていました。これを作るにあたってはそれぞれの分野で綿密な検討がなされているかと思われますが、それを感じさせない所がこの幼稚園の⼦供たちの世界を作っているのでしょうか。卒園した⼦供たちはどんな⼤⼈になって⾏くのかしらと帰りのバスで思いを巡らせました。加藤園⻑先⽣        ふじようちえんの皆様、⼿塚建築研究所の皆様良い時間を作っていただきありがとうございました。 (26回⽣)
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建築空間が⼈に影響を与えることを痛感させられる⾒学会でした。
「建築も⼈間も草も⽊も、 全ては⼦どもたちが成⻑してための道具である」 という園⻑先⽣の⾔葉に、建築家、 ディレクターと語り尽くした幼稚園の意味価値が集約されていると 思いました。⼦どもたちが幼稚園でのびのび過ごしている様⼦を⾒ることができ 、園⻑先⽣が全体を⾒渡す様⼦に、「道具」 という意味を深く感じました。
頂いた⼿塚先⽣の資料を読みまして、 幼稚園だけでなく、家庭や⼩学校以上の 学ぶ場や職場、 ⼤⼈がつくる社会のあり⽅までも考えさせられました。住まう(つかう) ⼈の思いが⼀体となるような建築空間がもっと増えたら、 いじめや鬱や⾃殺のない、もっと健康な社会になるのだろうか、、 。そんなことをつかう側としても考えていきたいと思いました。 (41回⽣)
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建築に関する詳しい会話や、メジャーやカメラを持った現役の先輩⽅の輝かしいお姿を拝⾒し、⾮常に感銘し、勇気付けられました。卒業してからはOGの活躍は⽿に⼊る程度でしたので、このような交流の機会はとても素晴らしいことだと思いました。 (62回⽣)
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メインは園⻑先⽣のお話でしたので逆に建築の本には載っていない情報を得ることができたと思いました。いいものを作り上げていくプロセスについても参考になる所が沢⼭ありました。今後活かしていけたらいいと思っております。
ランチでは住居の先輩⽅ともお話ができ、泉⼭館の製図室で世代を超えて勉強をしたという共通点を⾒つけて盛り上がったりして、とても嬉しかったです。(55回⽣)
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やはり雑誌などの媒体の情報と、実際に⼦供が⽣で使⽤している状況での⾒学では、感じる事が⼤分違いました。園⻑先⽣のお⾔葉のひとつひとつが、⼼に響き、「建築は⼦供が育つ道具」「状況をデザインする」「体験は教えられない」等、建築が⼦供の成⻑にどう影響するのかを深く考える良い機会になりました。
実⽣活では同年代の⼦供を育てる親として、また住宅だけでなく⽼⼈福祉施設等の設計者として、公私ともにとても良い経験をさせていただきました。(41回⽣)
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今後の見学希望先

・今後も、林雅⼦⽒設計の住宅など、個⼈ではなかなか⾒学できない建築の⾒学会があればと思います。また、妹島⽒や⻄澤⽴衛⽒の設計の住宅なども⾒学会があればぜひ参加したいです。私⾃⾝は⾒学したことがありますが、学会賞SHARE YARAICHOも住居の会⾒学にふさわしいのではないかと思います。

・訪ねてみたい場所は、具体的にどこというより、建築家の設計した個⼈邸を⾒たい。⼤勢になってしまうと難しいと思うので、あくまでも希望ですが…。

・以前も⾒学会があったかと思いますが、抽選で落ちてしまいましたのでまた機会がありましたら林雅⼦さんの⾃邸を⾒たい。