第21回住居の会奨励賞決定

第21回住居の会奨励賞
早川 静さん(38回生)

(内藤多仲記念館にて:研究の一環で訪問)

 

2019年度住居の会奨励賞は、早川静さん(38回生)に決定いたしました。

受賞された早川さんには、2020年7月(予定)の総会にて、講演いただく予定です。

早川さんの活動テーマは、『日本女子大学 明桂寮の保存活動』です。
1927年に建てられた鉄筋コンクリート造の「明桂寮」は、1993年より使用されていませんが、佐藤功一設計による意匠・構造・設備それぞれについて、革新的な試みをなされた貴重な建物です。保存・再生活動を行っていくことで、既存建物のさらなる活用の幅を広げたいと活動しております。

◆活動の背景と目的
日本に鉄筋コンクリートの建物が建ち始めて既に100年を超える月日が経っています。住居系建築物では、関東大震災前の御茶ノ水文化アパートメント、関東震災後の各地の同潤会アパートメントなどがありますが、初期のコンクリート事例は多くが取り壊されています。RC造建築物の税法上の耐用年数は50 年ですが、それは物理的耐久性のはるか以前に取り壊しが多く発生しているのは経済性を重視した結果も大きいでしょう。しかし、人口減少局面下の今日、スクラップビルドより既存ストックの活用が、スプロールを避け、環境影響を低減するためにもより重要な課題となっています。
また、「明桂寮」は、創立期の日本女子大にとって家政学の実践の場でもあり、創立者成瀬仁蔵先生の教育理念を伝えるものとして、日本女子大の歴史や家政学の歴史にとっても残しておくべき意味を持っていると考え活動しています。

◆これまでの活動と、今後の活動予定
1)研究活動・・・薬袋研究室の卒論生を含めた8名がそれぞれの専門に応じて意匠・構造・施工の特徴を文献などで調査中。2ヵ月に1度の割合で、交流会を行っています。
2019年建築学会大会に投稿。
2020年10月までに住総研に「建築家・佐藤功一による学生寮の建築技術に関する研究-住み継ぎに求められる長寿命性の検証-」というテーマで論文を提出予定。

2)清掃活動・・・寮地区の工事が始まる直前に屋上の泥を清掃したが、まだまだ全部の泥やゴミをとることはできませんでした。寮地区の工事が終わり次第、第2回目の清掃実施予定。
3)構造強度の確認・・コア抜きの位置特定のための調査・研究、及び大学との調整を実施。
2020年2月コンクリートのコア抜きを行い、その後10月までの間に耐震診断を行う予定。
4)広報活動・・・現在Facebookに月1回程度投稿しています。
5)卒寮者のネットワークつくり・・・卒寮生と連絡をとることが難しく、年1,2回程度のインタビューとなっていますが、引き続き行っていく予定です。

築100年近い建物の保存・再生活動を行っていくことで、既存建物のさらなる活用の幅を広げ、今後の特に学校建築の価値の高い建築の保存・活用のための道筋をつくりたいと取り組んでいます。また、このような鉄筋コンクリートの建物の長寿命性を実証する機会は少なく、そのデータの蓄積という意味でも、日本の建築界にとって価値のある結果を得られるのではと活動しています。

選考結果
〇奨励賞決定 早川静さん テーマ『日本女子大学 明桂寮の保存活動』
https://www.facebook.com/meikeiryou/

その他の応募者
土井原奈津江さん テーマ『高齢者グループリビング研究・普及活動』
http://glnet-groupliving.org/

今年度は2つの応募がありました。どの活動も大変すばらしい活動でした。
応募された皆様の益々のご活躍を心より期待しております。