【Q&A】交流会「変わらないもの、変わりゆくもの」

交流会「変わらないもの、変わりゆくもの」のQ&A集です。※敬称略

①パネリストの皆様への質問

質問:卒業生の皆様がどのようなお仕事をされているのか聞きたいです。どのような分野が多いかなど具体的に教えていただけたら幸いです。

小杉:交流会パワポの在籍OGのリストでご紹介しましたが、大成建設の社員の中で日本女子大出身者は22名、うち住居出身者は14名、うち設計本部内に9名おります。 住居から設計以外の部署へは、都市開発、エンジニアリング、施工のBIM計画室に在籍しています。 設計部内では、意匠設計、構造設計(24卒)、設備設計、法規計画室などに在籍しています。

井上:前職の(株)INA新建築研究所では、本学住居学科出身者は私含め2名でいずれも意匠設計でした。私自身は、卒業後17年(株)INA新建築研究所に勤め、その後独立開業して現在に至ります。

水谷:ハウスメーカー、ゼネコン、設計事務所、官公庁、インフラ系(鉄道会社など)。体感的にはハウスメーカーや住宅建材の会社が多かったと思います。(詳しくは住居学科へ…)

質問:住居の卒業生が社会に求められていると思う事、社会における役割はどういうところだと思いますか?

小杉:いろいろなバックボーンの方たちと複数ジャンルの建物の仕事をさせていただいたので「住居」という縛りはあまり意識していませんでした。 「社会に求められていること」というより、「小さくてもなにができるか」あたりでしょうか。 質問が難しかったので回答にならずすみません。
井上:社会に出てから住居学科であることを意識する事は特にありませんでしたが、住居の会に関わるようになり、住居学科のネットワークはとてもありがたく素晴らしいものだと思います。
水谷:生活にねざした建築の知識をもって社会貢献することでしょうか。でも一社会人として自立して健康に生きているだけで十分だと思います。

質問:ワークライフバランスをどのようにとられてきましたか?

小杉:あまりマジメに考えておりませんでしたが、社内では育休やジョブリターンを利用する人もおり、制度は整っております。

井上:目の前の好きなことに携わっていたら現在に至っておりまして、ワークライフバランスを考えたことは特にありませんでした。仕事も好きなことなので、特に独立してからはすべてが自分の思うようにできる時間になり、すべてを趣味の延長のように日々過ごしております。
水谷:私にとって仕事と生活はあまりにも地続きなので、両者を対極においてバランスをとることはそこまで意識していませんでしたが、育児が始まり必然的にワークミックスライフという生活スタイルになったと思います(ミックスしやすい職種というのもあると思いますが)

②パネリスト小杉 東子さんへお聞きしたいこと

質問:ゼネコンでの仕事で今まで一番困難だったこと、どうやって乗り切ったか、お伺いしたいです。

小杉:のど元を過ぎると忘れがちです。いくつか山を越えると、問題が起こるのは通常運転で、問題を解決することが仕事なんだろうなと思うようになります。

質問:BIMなどの技術やシステムが変化していく中で、設計の考え方や姿勢に変化はありましたか?

小杉:ベースの考えはあまり変わらない気がします。道具なので使う選択も使わない選択もありえます。一方「これ使えるかも」が腑に落ちると変わっていく可能性もあります。 3Dモデルを使うことは普通になってきましたし、衛生器具メーカーのLIXILさんは、A-SPECというハンディキャプトイレの自動設計をHPで公開されていますが、「反響がよく、問い合わせも多い」とおっしゃっていました。

質問:ご入社当時は男性社会だったかと思いますが、その中でご活躍されるにあたって難しく感じたこと、時代の変化を感じたことなどはありましたか?

小杉:男性社会だからというわけではなく、自分の先の見方や仕事の習得が甘く、いっぱいいっぱいだったと思います。 使ってくれた会社と優秀な同僚に感謝です。

質問:現役学生にメッセージを送るとしたら?

小杉:リクルートで優秀な学生さんを見ると「今の自分だったら卒業も就職もできないだろうな」と思いますし、学生さんのこれからな面を垣間見ると「自分はもっとひどかっただろうな」と思います。えらそうなことは言えないです。 

質問:一社に継続して勤務されてきたなかで大変だったこと、逆によかったことがあれば教えてください

小杉:転職される方は増えたと思いますが、定年まで勤続した上で再雇用で働かれる方も少なくないので、どちらが特別でもないと思います。会社が大きいと部署の異動はちょっとした転職気分になります。「社内の仲間がよかったのでジョブリターンを決めた」という人もいるように、いちど退職されて戻られる方もいます。中途採用も公募しておりますのでご興味のある方はお問い合わせください。
キャリア採用情報 | 大成建設株式会社 (taisei.co.jp)


③パネリスト井上 明日香さんへお聞きしたいこと

質問:経堂アトリエで地域とのどのような関係性が築かれているのかお伺いしたいです。

井上:飲食店「plumcafé」ギャラリー「plumgallery」といった1階のオープンなスペースを活用しながら、誰もが先生誰もが生徒という「ご近所大学経堂キャンパス」を運営しています。また、「世田谷区地域の絆連携活性化事業」により、世田谷区の他の地域の方との連携も図っています。

質問:建築をつくるだけでなく、場をつくる活動も始められて、気づいた事があれば伺いたいです。

井上:「建築」も「場」も私にとっては同じステージにあり、どちらも大切なことです。子供がいないので、子育ての代わりに暮らしの延長として経堂アトリエがあり、みなさまと関わっているイメージでしょうか。

質問:経堂アトリエの今後や、ご自身の今後のビジョンなどあれば伺いたいです。

井上:「経堂アトリエ」をひとつの基点としながら、もっと広い視野で社会に発信できる活動をしていきたいです。

質問:独立するために、大切(必要)だと感じているスキルは何ですか。

井上:スキルということではないかもしれませんが、「夢」をもつこと、頼ることができる「人」をもつこと、どんなちいさな「約束」も守ること、は大切だと思っています。

質問:組織事務所に就職された際は、いずれ独立されるつもりだったのでしょうか。

井上:はい。所属していた組織事務所の先輩方も独立される方が多くいらっしゃいましたし、いずれは独立したいと思っていました。

質問:会社所属から事務所経営になって、ご自身の設計内容への影響はありましたか。

井上:会社在籍中は、事業主に会社法人が多かったですが、独立してからは、個人相手の設計も手掛けるようになりました。

質問:近年、建築関連で関心の高いトピックを教えていただけますでしょうか。

井上:不動産との関わりです。どうしたら、良い物件を、良い状態で、エンドユーザーに届けられるのかに関心があります。良い状態の良い建築が、失われていく現状に心を痛めており、何かできないものか日々思いめぐらせています。

質問:仕事上のマイルールなどがあればご教示いただけますでしょうか。

井上:何事にも笑顔で取り組むこと。

質問:地域コミュニティ拠点を運営していく上でのコツは何だとお考えでしょうか。

井上:自分が楽しいこと、急がないこと。ゆるく運営すること。

質問:人との繋がりを広げる為に心がけておられることがありますか?

井上:人との繋がりを【広げよう】と思ったことはないです。人との繋がりは、誰かが作るものではなく、自然に生まれるものだと思っています。

出逢う方々には(住居の会も!)いつも恵まれていて感謝しております。


④パネリスト 水谷 優子さんへお聞きしたいこと

質問:雑誌編集の仕事でどういうことが面白いと感じられているか、どのようなライフスタイルを理想とされているか、お伺いしたいです。

水谷:編集の仕事については、知るもつくるも無限大なところが魅力だと思います。あと単純に本に触れていられるのが面白いというか幸せです。無知が武器になることや、取材でその道のプロに会えることも役得だと思います。

質問:雑誌編集ならではの役得だった点や、一番やりがいに感じたお仕事などがあれば伺いたいです。

水谷:現在のライフスタイルにとても満足しているのですが、欲を言えば運動する時間を取りたいです。体力は金なりです。

質問:建築をつくる側から、“見て伝える“側になられたと思うのですが、その変化の中でご自身の意識として変わった部分などありますか?

水谷:以前よりも建物のディテールやその効果にものすごく着目するようになりました(前職時代の勉強不足を痛感しました)。また設計から離れたからこそ、多面的に考えられるようになったと思います。

質問:編集に進まれたきっかけや、どのように就職活動をされたのか。

水谷:設計に携わるなかで、設計業務よりもその手法と効果を言語化・視覚化することに充実感を感じるようになったからです。就職活動は、自己分析したり、実際に建築系出版社で働いている方に話を聞いたりと、新卒の就職活動と基本的に同じです。

質問:出版社が書籍を企画する場合、どのようにテーマや著者を企画するのでしょうか。

水谷:定期開催される「企画会議」で、各編集者から提案された企画書をレビューします。最終的には社長決裁で採否が決まります。

質問:持ち込みの企画の場合、採算性以外で、この内容は出版するしないの判断の仕方と、著者の原稿のどこまで踏み込んで変えるものなのでしょうか。

水谷:持ち込み企画の場合も、原則的に企画会議→社長決裁という流れで採否が判断されます。原稿校正はケースバイケースですが、後工程で大きな変更が発生しないよう、企画段階で著者と綿密に打ち合わせをし、少しずつブラッシュアップしていく形で進めております。

質問:多くある雑誌の中で、現在の雑誌を選択された理由はございますか?

水谷:「建築にかかわる知識ならなんでもござれ」というスタンスに魅力を感じました。近年は一般教養を建築という切り口で編集するという試みも多く、手前味噌ですが総合力という点では唯一無二の雑誌だと思います。

質問:「建築知識」さんでは漫画を取り入れられていると思いますが、取り入れられるきっかけは何かあったのでしょうか?

水谷:定期的に組まれる特集企画(法規改正や用語辞典など)に対して、「いつものテイストだと飽きられてしまう+理解度を深めてもらう」ために表現方法の工夫が始まり、「写真でわかる」シリーズが始まりました。そこから「4コマ漫画でわかる」になり、最終的に「オール漫画」になったようです。

質問:現在記事にされたいと興味を持たれているものはございますか?

水谷:「ホテル」「仮想建築」はいつか特集を組んでみたいです。

質問:紙媒体としての「書籍」は今後どのようになると思われますか?

水谷:嗜好品や資料としての側面もあるため消滅はしないまでも、やはり市場は小さくなっていくと思います。

質問:社内ではどのようなチーム体制で取り組まれているのでしょうか?

水谷:12名前後で制作しています。そのうち2名が当該月号の制作進行を担う「特集担当」となり、担当月の企画構成、取材、資料集めなどを行います。特集担当は約6カ月ごとにチーム内で輪番していきます。