【今こそつながろうプロジェクト】ドイツ、ハンブルグより(2)

コロナ禍もなかなか収まらず心細い日々を過ごしていらっしゃる会員の皆様へ。
このような時こそ、つながっていきましょう!
海外で暮らす同窓の方々の【今】を届けていただきました。

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■ 福田陽子(Yoko Fukuda-Noennig)さん</strong> 44回生/後藤研ゼミ/ドイツ、ハンブルグ在住
建築関連企業勤務の後、早稲田大学建築史系研究室で修士号取得し、母校に戻って住居学科専任助手、後藤研究室にて博士号取得。早稲田の交換留学生(現夫)をたより2005年に渡独、12年間ドレスデンに住んだ後、現在ハンブルク在住。2006年より建築雑誌「A+U」特派員、2019年より日系企業勤務。建築ジャーナリストおよびライター兼サラリーマン。
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ハンブルク便り(2)

3月半ばから本番を迎えたドイツのコロナウィルス騒ぎですが、いつになったら元の生活に戻るのかと思いながら日々生活していくうちにクリスマス菓子が並ぶ季節になりました。時間が経ったことに驚くとともに、非常事態で生まれたマスク着用やソーシャルディスタンスや消毒がそのまま定着していくかも、という気配すらします。言われて久しいニューノーマルです。
数か月にわたって生活に必要な最低の行動範囲内で生活していたので、解除に従ってそこから出ることに不安を覚えるくらいでした。友人と会っても大丈夫?服を買いに行っても大丈夫?レストランで食事をしても大丈夫?と。
私の学生時代は高橋公子教授が華やかに住居学科を牽引していらっしゃいました。最後はとても残念でしたが入院時も病室の寸法を測ったり写真で記録したり、退院後に経験を活かすべくポジティブに入院生活を過ごしていたと聞きました。その後、ご主人の高橋鷹志先生から形見として公子先生の指輪をいただきました。先日その指輪を数年ぶりにつけたのですが、このコロナ禍を嘆いてはいけない、次に生かすべく積極的に利用しなさい…公子先生だったらそう叱咤激励してくださるかしら、という思いにかられました。
ドイツのハンブルクおよび私たち家族の生活を通してみたコロナ禍の続編をご紹介したいと思います。
どこの店の前にもマスク着用をうながす張り紙があります。
・オンライン授業
3月半ばから一斉にドイツ全体がステイホームになりました。学校や幼稚園は閉鎖、在宅勤務が可能な限り推奨され、ドラッグストアやスーパーや薬局など生活必需品の店のみ営業、飲食店は軒並みクローズ。
1、2週間の問題ではないと悟った時点で、子どもたち(5年生と6年生)が通う公立のギウナジウムはオンライン授業に切り替わりました。
オンラインと一口にいっても実は事前の整備がないと機能しないことを知りました。ギムナジウムでは入学と同時に親子ともども校内プラットフォームに強制的に組み込まれてメールアドレスを持たされており、先生と保護者と生徒のメールはもちろんのこと、休講のお知らせや落し物の連絡、放課後クラスの連絡など日常的に活用されています。
実はそのプラットフォーム内でオンライン授業ができることを、コロナ禍になって初めて知りました。自分のページを開くとオンライン授業やホームルームのある時間帯が表示され、参加できる仕組みです。横で様子を見ていたのですが、先生側には誰が挙手しているのかが表示され、「はい、手を挙げているユリアさんどうぞ」といった具合です。
そして課題や宿題もプラットフォーム内で共有されました。
ステイホームだからといっても授業のカリキュラムの内容に容赦はなく、かなりハードに勉強していました。
コロナ禍を見越してオンライン授業の機能を整備していたわけではないはずですが、ドイツはデジタル化推進に躍起になっていることもあり、コロナ禍によってデジタル化が実践になり一気に進んだことは幸いという見方があります。
さすがに子どもたちはデジタル・ネイティブ世代だけあり、見よう見まねでいじっているうちに難なく操作している姿には驚かされました。初めてのオンライン授業で設定を手伝おうと、頼まれもしないのに子どもの横に満面の笑みで座り、娘をヘルプしようとしたのに追い払われたうちの夫。デジタル環境におけるインターフェイスの関わり方は完全に違うと実感した瞬間でした。
自宅のインターネット環境やパソコンの所持が前提の話ですが、実はドイツの貧困家庭の割合はとても高く、オンライン授業が受けられない子どもたちが問題として浮き彫りになりました。ドイツ政府は第二波に備えてすでに予算を取っており、その中にはオンライン授業のための貸出用パソコンやネット環境整備のための予算も組み込まれているそうです。
3月半ばの春休み後から学校閉鎖&オンライン授業が続き、そのまま夏休みに突入しました。政府や行政での大議論の末、夏休み後の新学期が始まる直前になって通常通りの時間割でのスタートが発表になりました。授業以外でのマスク着用や食堂のテーブルの席の指定など措置がとられてはいますが、今のところ閉鎖にもならず順調です。

従弟たちが住むケルンでは合計6校が再び閉鎖となり、ハンブルクでも二年生の学年だけ自宅待機になる学校など事情はまちまちです。

歩く方向を示す床の表示
・それぞれの意識
若者は重症化しにくいというニュースが影響したのでしょう、ティーンや20代前半の若者はマスク着用やソーシャルディスタンスを最初からナメてかかっていたように見受けられました。
マスクではなくTシャツを引っ張り上げて口元を覆って店に入る、レジで間隔あけずに並ぶ、など。
コロナ禍が長引くにつれ、我慢できなくなった若い世代が週末にパーティーをすることが多くなり、近所でも警察が出動して騒ぎになりました。
ここにきてそうした若者を中心とした新たな感染が日本と同じように増えており、政治家がラジオやテレビで苦言を呈しています。
それとは対照的に引き続きソーシャルディスタンスに神経質な人たちも健全で、私が観察している限りは40代以上の女性に多いです。お店の中でもためらいなく他の客に注意をしています。
解除に従って店舗営業が再開した当初は入り口に消毒液を置き、入場数把握のためにカゴやカートを一人ひとつ持たされ、入口と出口を分けるなど徹底した対応が見られました。
しかし解除が徐々に進むにつれて「コロナはそろそろ終わり」という緩みムードになると、店頭の消毒液が切れたままになっていたり出入り口の表示に関係なく客が出入りしたり。
店舗と違って人数制限が設けられないのが公共交通機関です。マスクは必須で、マスクなしでの利用に対しては当初罰金なしだったのですが40ユーロに設定され、そして鼻出しマスクなど非適切な着用がニュースになり、罰金が80ユーロにあがりました。
罰金がなければ従わないというわけでもなく、マスク着用していなかった親子に対して他の乗客が抗議して途中の駅で降ろさせたという目撃談も聞きました。
タイタニックのルールをマスク着用に適用できると聞きましたが、まさにドイツ人には「マスク着用は規則です」が一番効果があるようです。ちなみに日本人に対しては「他の全員がマスクをしていますよ」というのが一番効果的だそうです。
クリーニング屋の前にて。お手製のマスクを販売しはじめました。
・オンライン悲喜こもごも
ステイホームで一躍脚光をあびたのが在宅勤務とセットのオンライン会議。
オンライン会議をする場所も実は秘かな関心事で、映りこむ背景をそれなりにみなが気にしていたはず。
大学に勤務する夫は他大学や研究所や企業とのプロジェクトが多くオンライン会議のオンパレードでしたが、背景に本棚があるのが一番インテリジェントに見える、のだそうです。「でもIKEAのBillyシリーズはだめ」と我が家のBillyシリーズの本棚の前で言わないでほしい。(Billyシリーズは正方形の枠の収納棚で、安価なためにどこのご家庭にもあります)
ニュースキャスターが上はネクタイ姿なのに下は下着だけなどオンラインならではの笑えるニュースもありましたが、我が家の夫もネクタイにジャケットの下はジョギングパンツ。いずこも考えることは同じようです。
仕事の効率性が上がったという話はよく聞きましたが、夫にいわせると効率が上がりすぎてしまって逆に詰め込みすぎてしまう、と。
つまり移動をする必要がないので朝9時から午後4時までぶっ通しのオンライン会議の予定があり、途中トイレ休憩をいくつか挟むだけでお昼の休憩時間をとらないような日、その翌日は朝から連続で8つものオンライン会議が入っているような在宅勤務が定着していました。
午後3時までの会議が終了して3時からの会議にクリックひとつで飛べてしまう。トイレ休憩も移動のための時間も頭を切り替える時間もなく瞬時にワープできるのは便利なようで、新たに浮上した問題だと感じています。
また、オンライン会議で世界中の人が感じたであろうことは、トイレくらいの大きさでもいいから誰にも邪魔されない個室が必要だということです。家族としてオンライン会議で居間やキッチンを占領されることは大変不便で、息づまる思いをしました。ポスト・コロナの住宅やオフィスの設計コンペが出てくるのを楽しみにしています。
ユネスコ世界遺産に登録されている鉱山のミュージアムにて。固定で設置された除菌液
・ロベルト・コッホ研究所の言う通りに
ドイツ政府はロベルト・コッホ研究所と連携して対策や措置を検討しています。
歴史で習ったように(覚えていますか?)フランスや日本のような強力な中央集権ではなく封建領主の時代が長かったドイツにおいては各州の自治がとても強く、政府が大枠の措置を発表しても各州がそれぞれに措置を細かく決めます。
これが実は厄介なのです。私が勤務する会社があるシュレースビヒ・ホルシュタイン州(SH州)はドイツの中でも最も厳しい措置で臨み、ハンブルクから海を求めて週末避難してくるハンブルクナンバーの車を州境で警察が追い返したこともありました。
日本はあくまで「要請」ですが、ドイツでは各行為に対する罰金がリストになって発表されています。ご参考までにSH州の事例を紹介すると、コッホ研究所が指定する危険地域に滞在した後に自己隔離しなかった場合は500~10000ユーロの罰金、危険地域から戻った後にコロナにみられる症状が出たにも関わらず保健局に申し出なかった場合には300~3000ユーロの罰金、などなど。
この原稿を書いている10月上旬は再び感染者数があがっていることが問題となり、危険地域に指定されないものの各地にホットスポットが出ていますSH州はこのホットスポットに滞在した人に対して自己隔離を求めているので国内旅行ですら行先に気をつけなくてはいけない状況です。
旅行で行ったブレーメンの港に停泊した船舶レストランの入り口にて。どこにでも除菌液が設置。

 

日本人独特の生活習慣や生活様式がコロナの蔓延に影響を与えていると私はずっと考えていましたが、6万年前のネアンデルタール人の遺伝子配合を受け継いでいるか否かかが重症化のカギを握るという研究報告をマックス・プランク研究所などの研究チームが先日発表しました。この遺伝子をもつ日本人はほぼ皆無だそうで、東アジアの国々の死亡率の低さに納得です。

COVID19を機に登場した除菌関係商品の専用コーナーはいまや花形
ワクチンの開発が待たれる今現在、秋に入りインフルエンザの懸念もあります。寒くなる季節、これまで開け放すことで対処していた飲食店はどうなるのでしょうか。
まだまだ現在形のコロナ禍ですが、引き続き油断せずけれども可能な範囲で楽しみや喜びをみつけならが過ごしていきましょう。
お元気でお過ごしください。
※前回のドイツ、ハンブルグより(2020.4月発信)はこちらへ→https://jyukyo.net/news/5440/
北欧系インテリアショップの店舗前にて。店の雰囲気にあわせた除菌液スタンド。

今こそつながろうプロジェクト】目次はこちら ↓
今こそつながろうプロジェクト 2020 -INDEX-

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