第3回 林雅子賞 『ウズマククウカンニサソワレテ』 宮原 真美子さん

開催日: 2003年3月1日(火)

選定委員: 委員長 富田玲子氏(象設計集団)
林昌二氏(建築家)
石川孝重教授
篠原聡子助教授
前野益子氏(21回生、前野建築都市研究所)
会場: 日本女子大学 樟渓館3階ワークショップA室

第3回林雅子賞選定会ご報告

01第3回林雅子賞選定会には、2004年度卒業制作および大学院修士制作から計7点の応募がありました。今回からエントリー作品の発表および講評を公開で行うことになり、在学生のほか住居の会会員の方々が作品発表から参加してくださいました。
9:30から、持ち時間一人8分での作品発表が開始され、それぞれの発表の後に選定委員との質疑応答をはさんで、11時に出席者6名(1名欠席)の発表が終わりました。 その後 選定委員を除いて退室していただき、選定作業に入り、各作品について慎重な審議が行われました。

0211:45には応募者と見学者みなさんに入室していただき、まず富田委員長による全作品の講評が行われました。富田氏は1点づつ、大変丁寧な講評をしてくださり、また各選定委員からも今後に向けての貴重なアドバイスがなされました。最後に受賞者の発表が行われ、拍手をもって選定会の終了となりました。

03引き続き出席者全員での懇談会となり、まず林昌二氏の祝辞をいただいたあとジュースとお茶で乾杯しました。用意されたサンドイッチとフルーツをつまみながら、選定委員や先生方と応募者、在学生、住居の会会員全員での和やかな歓談が行われました。作品それぞれについて個別に意見を交換したり、また日ごろお会いすることのできない林昌二氏・富田玲子氏から、設計について、建築についての体験談など、貴重なお話を伺うこともできました。参加なさった皆さんには、大変有意義なひと時であったと思います。

次回もまた同様な形式で行えたらいいと考えていますが、たくさんの方々のご参加を期待しています。
今回の選定会および懇談会が好評のうちに無事終了しましたことについて、ご協力くださいました方々に御礼申し上げます。特に事前の準備にいろいろとお骨折りくださいました住居学科研究室の先生方、前日の作品展示準備にお手伝いくださいました助手と院生の方々には心より感謝いたします。

※ 受賞者には副賞として松江美枝子氏(12回生)デザイン・制作のブローチと、林昌二氏より作品集『建築家 林雅子』(新建築社)が、それぞれのご好意により贈呈されます。お二方にも心より御礼申し上げます。

(副会長 尾崎澄子 記)

選定会委員長より 選定委員長 富田玲子

● 作品全般について
『勇敢な問題設定』
7人が7様の深い問題意識を持って建築と都市に果敢に立ち向い、具体的で自分のこととして実感できる回答を出そうとする姿勢がすばらしかった。それぞれの回答が息の長い調査研究に裏づけられて充実したものとなっていた。7人の課題の領域がかなり異なるのも興味深かったが、<地域><記憶><再生><地形><生涯学習><子供>などの言葉を共有しているのが、大変印象深く、頼もしく思った。
『残念なことは』、問題提起、調査研究、構想作り、そして設計のための時間配分である。設計にもっと時間をかけてほしかったと思う。その土地の光や風、人々の顔が感じられる様な空間構成、そしてスケールや素材が感じられる様な表現を望みたい。必ずしも全体を一様にていねいにではなく、めりはりがあって設計意図を明確に伝える表現を。
『不思議なのは』、7人中5人の作品名が英語で書かれ、説明文や図面中にもたくさんの英語が現れることだ。日本語で日本の街と建築を考えることが今むずかしくなっているのかしらと、不安に思えて来る。

●受賞作品「ウズマククウカンニサソワレテ」について
建築することの喜びがまっすぐにせまって来る作品であった。仙台広瀬川河畔公園の空と陸と水を結びつける穴ぐら空間が魅力的である。それが市民図書館跡地に建つ漫画図書館で良いのか、また、穴がもともとあったのならもっとおもしろい、などの疑問も出たのだが。

(とみた れいこ/象設計集団)