【開催報告】目白キャンパス見学会・座談会(2023年3月5日開催)

まだ寒いながらも春の訪れを感じられる3月5日、日本女子大キャンパス見学会・座談会「卒業生がつくる目白の森キャンパス」が多くの来場者を迎え開催されました。

百二十年館にて記念撮影

2021年4月に人間社会学部が生田から目白キャンパスへ移転することとなり、120周年を記念して妹島和世さんの設計によって「目白の森キャンパス」は完成しました。

見学会に先立ち、百二十年館のラーニングコモンズ「かえで」において妹島和世建築設計事務所の棚瀬さんから、新図書館、杏彩館、百二十年館の構造や設計および施工のポイントについてお話をしていただき、その後4グループに分かれて学生の皆さんの説明を受けながら見学がスタートしました。

上:妹島和世建築設計事務所の棚瀬さんのレクチャー 下:見学会にて

キャンパスのほぼ中央にある百二十年館は、開放的な広いパティオを囲むロの字型のプランになっており、2.3階には活動の様子がうかがえる廊下に面して研究室が並び、地下にパティオに続くラーニングコモンズ「かえで」と教室があります。1階のピロティはキャンパスにオープンに開かれて、目白通りから不忍通りへのつながりを感じられる空間となっています。

目白キャンパスの中央にあった大きなクスノキを覚えておられる方が多いと思いますが、百二十周年館の建設に伴い伐採されることになったのだそうです。が、なんと学生有志の皆さんの活動により、泉プロムナードに移植され保存されています。これからもシンボルとして学生たちを見守ってくれることでしょう。

不忍通りに面した杏彩館は、街とのつながりを意識したヴォールト状の屋根を冠したファサードになっています。ヴォールト屋根は図書館に隣接した青蘭館や百二十年館にも用いられていて、年代の異なる建物が点在するキャンパスに統一感を持たせていました。妹島さんのお話によると、ヴォールト屋根はJWUをひっくり返した形で、建物のランドマークになると思いつかれたのだそうです。

左:杏彩館 右:成瀬記念講堂

杏彩館は学生たちの食堂や滞在スペースとなっていて、とても居心地よさそうです。
生田から人間社会学部移転による学生2,000人増に対応するためでしょう。学生の滞在スペースがとても増えていることが、キャンパスを歩いているとよくわかりました。
随所に自然と学生が集まり様々なニーズに応える工夫が見受けられました。

目白キャンパスでは成瀬講堂に次いで古い樟渓館も見学しました。なぜ今回古い建物が見学コースにあるのかと思いましたが、中に入ってみると歴史を感じる味わいのある空間を体感でき、そこには住居学科の製図や模型作成のための教室がありました。ここでは、参加者それぞれが学生時代を思い出し、回生を超えて課題提出などの話が弾み楽しい交流の時間を持つことができました。

座談会の会場となる成瀬講堂に向かって歩いていくと、目白通りの向こうに図書館が見えてきます。歩道橋が撤去されて、空間的にキャンパスの一体感と広がりが感じられます。今回は外観のみの見学となりました。

会場を成瀬講堂に移して、妹島さん、清水建設の佐藤さん、山下PMCの丸山さん、そして篠原学長というこのプロジェクトのキーマンとしてご尽力された4名の座談会が住居の会の三木会長の進行で始まりました。

 

最初に、妹島さん(写真右から2番目)から、目白の森キャンパスの5つのコンセプト①緑でキャンパスをつなぐ、②日本女子大のファサードを作る、③既存建物と新規建物の融合、④滞在型キャンパスとしての教育研究にふさわしい空間の創出、⑤地域と共にあるキャンパスについて講演されました。このプロジェクトを依頼されて、「すごくうれしかった!」とのこと。

佐藤さん(写真右)は、清水建設の設計長の要職に在って、今回のプロジェクトでは社内のアドバイザーとして活躍されました。妹島先生のグランドデザインをチームで汲み取り理解し、妹島事務所と力を合わせ、日本女子大学が求めるキャンパスの実現に向けて取り組まれたエピソードをお聞きして、地道に多くの困難を乗り越えられたのは本当にすごいことだと思いました。

丸山さん(写真左)は、30年前にアメリカからの市場開放に伴い日本に導入されたプロジェクトマネージャーという仕事とは何か、基本設計完了後に参画した際に重視したポイント等について教えていただきました。
建築だけで建築はできない、建築と周辺のものすべてをまとめ上げる醍醐味。設計、施工、クライアントである大学の間に立って、より質の高い建築を作り上げていくための総合的なマネジメントを行うというのは、とても重要な仕事だと思いました。

篠原学長(写真左から2番目)は、中庭というヴォイドがつなぐ多様な風景、行為の共有、関わる余白、風景の共有、多様な学び、多様な人々、創立当時のおおらかな中庭を取り戻したと話されましたが、時代が変わっても受け継がれる大切なものがあると感じました。

今回のプロジェクトでは、各方面での調整の難しさや、狭い敷地の中で、大学運営をしながら工事を進め、一気に2000人の移動、予算の厳しさなど、なかなかの難事業だったとご苦労されたことも伺いました。
また、今後の運営の仕組み作りへの取り組みや、これからの大学は、地域に開かれ、街と共存する大学を目指すという抱負をお聞かせいただきました。

座談会では、卒業生だからこその大学に寄り添う強い気持ちや、学生たちにこの空間を体感する大切さ、新たな使い方など発展させてほしいとの期待感などが伝わってきました。見学したキャンパスは、設計のコンセプトが実現された素晴らしいものでした。そして設計だけでなく施工やマネジメント、大学それぞれの大変な努力とそれに携わった卒業生の強い情熱があって素晴らしいプロジェクトが完成したことを、同じ卒業生として誇らしく思いました。

これからの日本女子大の未来がますます楽しみです。
以上のように、座談会の皆様の熱い思いをお聞きすることができ、あっという間に閉会となりました。
最後に、篠原学長より、2024年度より「建築デザイン学部」と新設されることが、プロモーションビデオを交えて紹介されました。益々発展することが期待されます。

それでは、次回のイベントを楽しみにしてください。
アンケート結果はこちらをご覧ください。→アンケート結果リンク

(企画係 30回生 長谷川由紀)(2023/03/21記)