【今こそつながろうプロジェクト】広島より ~ 医療従事者の家族として

新型コロナ感染拡大の影響で心細い日々を過ごしていらっしゃる会員の皆様へ。
このような時こそ、つながっていきましょう!
トンネルの先がまだ見えない今、全国各地で暮らす同窓の方々の【今】と【メッセージ】を届けていただきました。(執行部)

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■ 吉貴礼子さん(旧姓) 44回生/沖田ゼミ/広島県在住
卒業後5年間、住宅メーカー勤務。その後専業主婦。近年、インテリアコーディネート事務所にてパート勤務経験あり。
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会員の皆様、いかがお過ごしでしょうか。
全国や世界でご活躍の皆様のお役に立つような話題は提供できませんが、医療従事者の家族という立場から、思いなどをお伝えできればと思います。

花の祭典「フラワーフェスティバル」のメイン会場となる広島平和記念資料館前。花の展示はされる予定でしたが、それも中止に。
花の祭典「フラワーフェスティバル」のメイン会場となる広島平和記念資料館前。花の展示はされる予定でしたが、それも中止に。

首都圏で新型コロナウィルスの感染が急速に拡大した当初、広島では「いずれ広島も」と口にしながらも危機感はそれほどありませんでした。しかし、夫が総合病院の医師をしている私は、日々変化していく夫の何気ない話から、感染拡大が起きた後の医療体制の厳しさをひしひしと感じるようになっていました。

そのうち、あっという間に広島県内で複数クラスターが発生しました。家族の感染以上に「もし自分が感染して夫にうつしたら…。」ということを考えました。大勢の患者さんと病院関係者への感染の可能性、病院の外来や手術停止、そして広島の医療崩壊、、、最悪の事態が頭を駆け巡りました。ただただ「恐ろしい」の一言でした。

医療従事者の家族としての責任の重さをここまで感じるのは初めての経験です。自分が感染して大変なことになる夢まで見ました。

コロナに負けないためには、外出自粛、手洗い、消毒はもちろん、免疫力を下げない生活をすること。皆さんご存知の通りです。それなのに、免疫力を下げるストレスを自分でかけてはダメだ!と思い直し、今は必要以上に恐れないことを心がけて生活しています。早く寝る、きちんと食べる、お風呂につかる、家の中で楽しいことをする。皆さんと同じく、できることを最大限する。今はひたすらそれだけです。(夫は、笑ってしまうほど早く就寝することもあります。)

実際に治療に携わっているスタッフの家族は、想像以上の対応をされていることと思います。我が家でも夫の状況の変化によっては、さらに強力な対策が必要になる時もくると考えています。今は家庭内隔離もせずにできる範囲の対策で生活できていることは有り難いことと思っています。

医療現場と同じように教育現場もまた未曾有の状態です。わが家には高校三年生の双子がおります。それぞれ別の高校に通っていますが、どちらの学校も学習環境を整えようと奮闘してくださっていることがうかがえ、とても感謝しています。しかし、Web授業の予定もない学校もあり、大学受験までに授業が終わらないのではないかと心配する声も聞きます。

教育は平等であるべきと言いますが、平等とは程遠いのが現状です。子どもたちは、置かれた状況で自己管理や努力をしなければならず、まさに人間力を問われています。

高校三年生にもなればある程度本人に任せられますが、年齢の低い子どもたちのことを考えると、問題はさらに大きく深刻なことが憂慮されます。

わが家は現状、不安と困惑、といった程度で済んでおります。しかし、いつ大切な家族が危険にさらされるかわからず、そのリスクは明らかに高い、という恐怖がいつも心の奥に張り付いています。

不安と恐怖は、人々の心をあらぬ方向に引きずります。広島県ではクラスターの発生に伴い、デマや患者さんへの謂れのない非難などが巻き起こり、県知事がそれを戒めるメッセージを何度も出すという悲しい事態になっています。患者さんを受け入れている病院に非難の声が多く寄せられるなど、全国と同様の問題が起きています。

普段から人と人がすぐに繋がりやすい丁度良いコミュニティだと思っていた広島。その丁度良い具合が、逆に魔女狩りのようなことをするのに適していたと思いたくはありません。平和都市ならではの柔軟で強い絆をつなぐことができると信じています。

鳥が花壇に運んでくれた花がきれいに咲いています
鳥が花壇に運んでくれた花がきれいに咲いています

世界が大きく傾こうとしている中、倒れそうな誰かを誰かが支えようと手を差し伸べる、そんな光景を世界中で見聞きします。「人は支え合って生きている」幼い頃から幾度となく耳にしてきたこの言葉を、これほど世界規模で実感し感謝することは今しかないかもしれません。

世の中では医療従事者に感謝を、と声高に言ってくださいます。家族としてとても励まされますし、家族を誇りに思う気持ちも湧いてきます。

しかし、リスクを負って働いているのは医療従事者だけではありません。本当に様々なところで社会を支えている全ての人々が称えられるべきだと強く強く思います。皆様の活動自粛、生活上必要な仕事への従事こそが社会生活を守り、医療従事者を守ってくれていると、家族として心から感謝しています。

この困難な時間を共に生きているという偶然を、新しい絆をつなぐ必然としていくことができたら、人は更なる優しさと強さを手にすることができると信じています。

心にささる祈りの言葉を見つけました。
『ニーバの祈り』
主よ
変えられないものを受け入れる心の静けさと
変えられるものを変える勇気と
その両者を見分ける英知を与えたまえ
(ノートルダム清心学園前理事長 Sr.渡辺和子 訳)

最後に、毎日犠牲になられている多くの方々のご冥福を心からお祈りするとともに、皆様と皆様の大切な方々のご無事を心より願っております。

2020年4月26日
吉貴礼子(旧姓)

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