【今こそつながろうプロジェクト】 アメリカ合衆国東部ニュージャージー州より 

なかなか終息が見えない新型コロナ感染拡大。このような時こそ、会員同士でつながっていきましょう!
全国各地で暮らす同窓の方々の【今】と【メッセージ】を届けていただきました。(執行部)

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■溝部真紀子さん(旧姓) 39回生/沖田ゼミ/アメリカ ニュージャージー州在住
建設会社、設計事務所勤務を経て1999年結婚を機に渡米。現在は医療従事者として訪問看護に携わる。
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ニュージャージー州で今起きていること

2020年5月2日現在、私が住む米国ニュージャージー(NJ)州は、隣接ニューヨーク州に次いで多くの新型コロナウィルス感染者と死者を出しています。その累計数は、感染者123,717名、死者7,742名。州の人口は約880万人で東京都の人口よりも100万人程少なく(面積は東京都の約10倍)、今の東京都の罹患者数4,477名, 死者数141名と比較すると、その深刻さをご理解頂けるかと思われます。

NJ州は、全米で最も深刻な感染状況にあるNY市マンハッタンへの通勤圏にあり、それは州内での感染が急速に拡大した要因の一つと考えられています。

近所の国立公園(Sandy Hook, Gateway National Recreation Area)内にあるサンディフック灯台は、現在アメリカ国内で使われている灯台で最古のもの。4/9より閉鎖していたが、急遽5/9より開放が決定。
近所の国立公園(Sandy Hook, Gateway National Recreation Area)内にあるサンディフック灯台は、現在アメリカ国内で使われている灯台で最古のもの。4/9より閉鎖していたが、急遽5/9より開放が決定。

3月9日、NJ州において11件の感染例が確認されると、州知事より緊急非常事態宣言が出されました。各施設の一斉閉鎖に始まり(学校/ 映画館/ 遊園地/ ションピングモ-ル/ ジム/ 理髪店/ 飲食店(テイクアウトのみ可))、地方選挙日の延期、ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)の周知徹底、若年層の夜8時以降の外出禁止等が発令され、それまでの日常生活が一変しました。

突然の学校閉鎖、オンライン授業のはじまり

3月16日、地元公立高校に通う娘の学校は閉鎖され、全ての授業がオンラインに切替わりました。現在5月15日までの閉鎖は決まっていますが、6月の学年度末まで延長される懸念が広がっています。夏季休暇を利用しての補講案もありますが、学校の予算と、冷房設備のない校舎が多いため、実現性は低いと予想されています。オンライン学習への切り替えは、生徒1人に1台のクロームブック(Choromebook )が中学生の頃より配布され、それを使っての課題提出も日常的に行われていたので、比較的スム-ズでした。

遠隔授業は、Google classroom, Google hangouts等を使用して「動画+やりとり型」「課題やりとり型」といった方法で進められています。始めはオンライン授業に「疲れる」とぼやいていた娘でしたが、今ではやり方にも慣れて、SNS上で繋がっている仲間の声がラップトップ上から聞こえてくる光景が日常となりました。どんな形でも「友達と繋がっている」ことの大切さがわかります。

息抜きの外出が苦痛に

3月21日にはより厳しい外出自粛が発令され、自宅待機は約6週間におよびます。

台所を預かる身として一番変化を感じたのは、食料の買い出しです。外出自粛が始まった頃は外に出る口実にもなるので、気分転換の気持ちで買い物に行っていました。しかしマスクなしでは店に入れなくなり、すぐに入店待ちの行列ができる事態となりました。店内でソーシャル・ディスタンシングを保つため厳格な入場制限をしたからです。入店は1家族につき2人までとされ、子供を連れて行くことも難しくなりました。

そして帰宅すると、買ってきた物は必ず消毒をしてからしまう習慣がつきました。この手間を考えると買い物が苦痛に感じるほどでしたが、今は完璧を求めず、精神衛生を保つようにしています。

何と言っても、いつも明るく挨拶をしてくれた店員さんから笑顔が消え、客との間に設けられたプラスチックシールドの向こうで黙々と仕事をする彼らを見て、どんよりとした気持ちになって帰ってくることもあります。

コロナ患者受け入れにシフトする医療現場

3月23日、医療現場の崩壊を防ぐ対策として 、緊急性のない手術は先送りされる方針が出ました。しかしこれにより病院は収入減となり、看護師や医師の一部減給や失業を招きました。また歯科診療も、飛沫感染を予防する見地から一旦閉鎖されました。

私自身、歯の定期検診が2度も延期になり、先の見通しが立っていません。娘のかかりつけの小児科医からは、感染予防に沿った来院の手引きが知らされました。受診の際は、診療所の駐車場で車中待機し、携帯で呼び出しがあると1人ずつ診察室に入って診察を受けるというものでした。

私の身近なところでも、仕事仲間である看護師がPCR検査を受ける事態が発生しました。幸い結果は陰性でしたが、訪問看護に携わる身として、常に感染の危険と隣り合わせであることを改めて実感しました。いくら自身が細心の注意を払っても、感染の可能性を絶つことは難しい、自分の家族をも感染させてはならない、より気を引き締めて感染予防に努めるようになりました。

医療現場は一時、感染者急増によりとても逼迫していましたが、4月中旬頃から退院者数が入院者数を上回る日が出るようになりました。医療現場の物資不足を抑えるため、一般人は布製(バンダナ等)マスクの使用を推奨されています。我が家は娘と一緒に布製の手作りマスクを地元の病院、小児科病院に寄付するボランティアをしています。

手作りマスクを寄付した小児専門病院のスタッフから届いたお礼のメッセ-ジ
手作りマスクを寄付した小児専門病院のスタッフから届いたお礼のメッセ-ジ

PCR検査の実施状況、期待される新たな検査方法

PCR検査は、特定の診療所や検査専用の場所(例えば自動車教習所を借り上げてドライブスルー方式で検査)で行われています。検査対象は今のところ呼吸器系等に疾患のある人、医師から処方箋が出た人、濃厚接触者(感染者の家族、同僚等)に限られています。費用は各種保険が適用されますが、保険が無くても140ドル(約15,000円)で受けることができます。

4月中旬、ニュージャージー州立ラトガーズ大学が開発した唾液検査が、FDA(アメリカ食品医薬品局)から感染の診断検査として正式認可され、既に一部地域で運用されています。この検査は、唾液を試験管に吐き出すだけの簡易さで、検査員が飛沫を被る危険性も低く、検査結果も24-48時間内に判明するため、短期により多くの検査が実施可能という点において、経済活動再開の鍵を握るものと大変期待されています。

公園の閉鎖、規則を守れない人々

4月7日、厳しい外出規制の中で唯一憩いの場所であった公園が全て閉鎖されました。私が居住するモンマウス郡には国立や州立の公園が数多くあり(Sandy Hook, Gateway National Recreation Area等)とても綺麗なことで有名です。公園の閉鎖理由は、一部の自粛規制が守れない人々による、10人以上の集会が後を絶たない事だったとのこと、非常に落胆しました。また18歳以上の夜間外出禁止令は、いわゆる「コロナパーティー」と呼ばれる若者による夜間の集まりが多数通報されたことへの対応の結果でした。

近所の郡立公園Bayshore Front Park の4月7日の閉鎖直前の様子。水平線の向こうはマンハッタン
近所の郡立公園Bayshore Front Park の4月7日の閉鎖直前の様子。水平線の向こうはマンハッタン

自宅待機令がもたらしたポジティブな面

毎日同じことの繰り返しで閉塞感に苛まれることもありますが、良い面もありました。それは、家族が毎回揃って食事をするようになったことです。直接お互いの顔を見て会話する機会が増えたことで、高校生の娘が以前よりも自分から話をしてくれるようになったのは嬉しい変化です。食後にボードゲームで遊んだり、娘とクッキーを焼いたり、マスクを作ったり。シンプルだけれど、家族との共有時間が増えたことは、貴重な気づきをもたらしてくれました。

マスク作りのボランティア活動で新たな人々との交流が生まれたり、またネットを通じて、ご近所さんから遠方の友人知人、普段なかなか連絡の取れなかった学生時代の旧友達とも、交流する嬉しい機会に恵まれました。

人々の外出が制限され交通量が減ったことで、空気が澄んできたことを実感します。散歩の時は本当に気持ち良く、青空がとても綺麗で、空を眺める時間が長くなりました。

庭に咲いた八重桜が青空に映える
庭に咲いた八重桜が青空に映える

今回、世界中が同じウィルスによって困難に直面している現実は、改めて世界は狭いことに気づかされます。日本の皆さんも、今は外出自粛を強いられて大変な思いをされている事と思います。私も同じ思いでいます。それゆえ、苦しみを共有できることをむしろポジティブに捉え、こんな時こそ人との繋がりを大切に、知恵を出し合い、互いに励まし合って、希望を持って皆で乗り越えて行けたらと思います。

最後に、この感染病で亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。また、最前線で活躍されているエッセンシャルワーカー(必要不可欠の労働者)、またその方々を支える家族の皆さんに深く敬意を払います。

コラムリレーの機会を与えて頂きました、住居の会の執行部で同期の井上恵子さんにも謝意を込め結びとさせて頂きます。

2020年5月03日
溝部真紀子

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